人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ストレスフリーで働くために

 

f:id:mikonacolon:20211211151547j:plain

自由に働くためには、まずは環境を整えて

 自由に働くってどういうことだろか、そう考えたら、ふとある人の言葉を思い出したのです。それは芥川賞作家の朝井リョウさんが数年前に新聞のエッセイの中で書いていたことです。「僕は今、誰からもとやかく言われることなく、自分が書きたいものを書いて生活できています。そういう点では僕は紛れもなく幸せ者だと言えます」

 そんな読み手からしたら、羨ましくて、まるで別世界の住人みたいなことを躊躇なく書けるなんて、と正直言って仰天しました。そうか、作家とはそんな至福の時を味わえる職業なのだと改めて気づいたのでした。とにかく仕事が楽しいのです、自分の世界を自由に表現できるのが。昔言われていたような、作家はみな精神分裂でいつも不安を抱えているから精神安定剤が手放せないなどというステレオタイプな考え方は忘れていいのです。『きことわ』で芥川賞を受賞した朝吹真理子さんは、「ストーリーはどうやって考えるのですか」と聞かれて、なんと「空から降りて来る」と答えています。まず頭の中に登場人物が浮かび上がってきて、そしたら彼らが勝手に動き回ってくれる、だから自分はそれをそのまま描くだけでストーリーができあがるのだと。朝吹さんが言うことは私のような凡人にはさっぱり理解できなくて、わけがわからない手品のようなものです。どうやら小説を書くことはアイデアが浮かばなくて、悶々とすることなどではなくて、それどころかいとも簡単なことのように錯覚してしまいそうです。

 作家の頭の中は底なし沼のように潜在能力が詰まっていて、常に水が湧き出ていて枯れることのない泉のようです。自分ひとりで、自分の能力だけで仕事ができてしまうところが、傍から見ると自由でストレスが無くていいなあと思ってしまうのです。でも一つだけ気になるのはひたすら原稿用紙、あるいはパソコンに向かう孤独な作業の連続だということです。ただ、その行為が楽しいのだとしたら、憂うべき孤独までも味方につけて仕事をしてしまうのが作家なのでしょう。

 ひとりで自由に仕事をしているのが作家だとしたら、職場で働いている私たちにとって「自由に働く」ことは可能でしょうか。もちろん、大勢の中のひとりなのですから自分勝手は許されません。でも限定付きの自由なら与えられるし、楽しくとは言えないまでも、納得して日々働けると思うのです。つまり一日一日をやりがいみたいなものをある程度感じて生きていけます。でもそれがだんだん感じられなくなったとしたら、「ここには居場所がない」とその場から移動することを考えるようになるのです。

 お盆に叔母が亡くなって葬式に行った時、孫娘のひとりが「祖母は地域の人に尽くした人でしたね」と私に話しかけてきました。彼女は大学で児童心理学を学んだのがきっっかけで児童養護施設に就職して2年目でした。夢を実現したかに見えた彼女もその時は壁にぶち当たっていました。施設の子供にはできるだけ自由にさせてあげたいのに、他の職員は彼女とは指導方針が違うらしく子供に強要することもありました。人によって対応が違ってくるのは子供のためにならないし、何よりもそれを見て見ぬふりをするのが耐えられなくなりました。自分の居場所がここにはないと確信した彼女は「どこか別の場所に転職するしかない」と環境を変えようと決心したのです。自分と同じ考えをもつ同志が周りにいる、そんな職場で働けたら自分は希望を、やりがいを見つけられると話していました。自由に働く、つまりストレスフリーで働くためにはまずは職場を、環境を整えるのが先決といえるのかもしれません。

mikonacolon