人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

畑に眠る赤紫の美味しいやつ

今週のお題「赤いもの」

f:id:mikonacolon:20211105221038j:plain

▲ラパスはすり鉢状の盆地にあり、上下の標高差は約500mにも及ぶ。NHKまいにちスペイン語テキストから。

大人になって、種類が多いことを初めて知った

 実りの秋、食欲の秋で、畑でとれるもので赤いものと言ったら、ズバリさつまいもでしょう。思いだすと、子供の頃、家の畑でさつまいものつるを引っ張ったら、まさに芋ずる式に根っこにお芋が連なって出て来るので、面白くて堪りませんでした。でもその頃のさつまいもの食べ方の定番は、ふかし芋でした。台所にあるかまどで藁をくべて、芋を蒸かしていました。おやつとして食べていたものの、ごはんのおかずとして食卓に上ったことはありませんでした。さつまいもの天ぷらも結構美味しいと思うのですが、うちの母は家で天ぷらをしない主義でした。それにはちゃんと理由があって、知り合いの家で天ぷらで火事を出した家があったそうで、心配性の母はしないと決めたのでした。そんな訳で、さつまいものふかし芋以外の食べ方を大人になるまで知りませんでした。

 大人になって初めて、さつまいもにも様々な種類があって、味もバラエティーに富んでいるのだとわかって目から鱗でした。それにさつまいもはご飯のおかずにもなるのです。ただ、私にとっての一番の食べ方は焼き芋です。と言っても自分でするのではなくて、♬焼き芋~、石焼き芋~♬ の街中で見かける焼き芋屋さんのお芋です。あの芋って、どうしてホクホクでとろけるような黄金色をしているのでしょう。あれが本当にあの紫色のイモかと思うほど化学変化を起こし、魔法をかけられて変身してしまうのです。新聞紙で作った袋に入れてもらったら、その場ですぐにかぶりつくのが一番です。お行儀よく、持って帰って家で食べようなどと思ったら、美味しさが逃げてしまうのでもったいないのです。

 よく映画やドラマの中で焼き芋を焼いて食べるシーンが出てきます。夥しい落ち葉とさつまいもさえあれば簡単にできそうですが、実際にはどうなのでしょうか。そう言えそれはば、子供の頃に焼き芋を焼いているところを見かけたこともないし、また実際に試してみたこともないのです。きっとそんなことを考えてたみたこともなかったのでしょう。

 それから、さつまいもの色に関してはその色は赤紫だけではないことを知りました。それはもう何年も前に会社のお昼休みに先輩がさつまいもを蒸かして持ってきてくれた時のことでした。故郷の三重の実家から送られてきた何種類もの芋を朝から蒸かしてきてくれたのです。それらの芋の色は鮮やかな赤紫だけでなく、白、黄色と様々でした。「食べて見てごらん、それぞれ味が違うから面白いよ」と勧められたので試してみました。特に驚いたのは、外見は白い色をしているのに、中身は紫色をしている芋でした。それは「○○芋っていうんだよ」と名前を教えてもらったはずなのに、その場で頭を素通りしてどこかに消えてしまいました。

 常に周りへの気配りを忘れなかったその先輩は当時悩みを抱えていたのです。でも私たちにはそんな素振りも露ほども見せることはありませんでした。職場ではいつも明るく振る舞っていた先輩の夫は白血病を患っていて、余命宣告も受けていました。その事実を私たちが知らされたのは亡くなった後で、椅子から転げ落ちるほどの衝撃を受けました。夫の葬儀を済ませ、少し落ち着いたかと思う頃、先輩は会社に出勤してきました。彼女の第一声は、「思いっきり泣きたいくらい悲しいのに周りがそれを許してくれない、それがただ、ただ、辛かった」でした。先輩の話によると、夫が亡くなってベットで呆然としていたら、すぐに葬儀屋がやって来ました。そして途方にくれてオロオロしている自分に躊躇なくお金の話をしようとするのです。祭壇がいくらいくらだのと説明し、その場でどれにするか選べと迫りました。悲しみに打ちのめされている人間に冷静に判断する余裕などあるわけもなく、業者の言われるままにするしかありませんでした。先輩が言いたかったのは、現実はこんなものだから、よく覚えておくようにという教訓でした。

mikonacolon