人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

いい人の罠に嵌るとき

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いい人になろうとすると自滅してしまうから

 あれは仕事を終えて、駅への道を歩いていた時のことでした。私のちょうど前を歩いていた二人の中年の女性が次のような会話を始めたのです。話を切り出した方の女性はもうどうしようもないくらい激怒しているようでした、誰にかというとほかでもない自分にです。

「今日はとんでもない日だったわ。つくづく自分が嫌になった」

「どうしたの?疲れた顔しちゃつて」

「あの人が困っているようだったから、自分のを後回しにして頼まれた仕事をしてあげたの」

「そんなことしたら、自分の仕事が間に合わなくなるでしょう」

「少し頑張ればその時はできると思ったのよ。それが上手くいかなくて、上司に嫌な顔されて、事情を知らない周りの人にも呆れられたの」

「大変だったねえ、今度からは気を付けたほうがいいよ」

「うん、もう絶対やめとくわ。自分がこんなにも追い詰められるなんて、辛いだけだものね」

 ざっとこんなような二人のやり取りが聞こえたわけですが、彼女たちの話を聞いたら私も「それって、会社であるあるの場面じゃない」とほくそ笑んでしまいました。もちろん、自分も経験したことがあるモヤモヤでやってしまった感満載の事態でした。以前話題にもなったし、ベストセラーにもなった『嫌われる勇気』という本が話題になりました。その本によると、先の女性が自分の取った行動を悔やみ、自己嫌悪になってしまったのは人なら誰でも持っている「いい人でいたい」気持ちが原因なのです。本当ならきっぱりと断らなければいけないのに、それができないというか、自分をよく見せたくなってしまうからです。

 別に優しくて、特に親切な人間でなくても、ある時突然「頼れる人」だの「仕事ができる人」だのと思われたい、というような気持ちになってしまうのです。だから頼みを拒絶できないし、できれば人には嫌われたくないという本音もあるからです。考えてみると、普通の人間にとって「断る」という行為は自分の心にチクリとした痛みを伴うことです。たとえ断ったとしても自分には断わる自由があるし、相手に非難される筋合いなどない場面においてもそうなのです。「断る」には揺るぎない強い心とエネルギーが必要です。それこそ強烈な個性を持っていて、周りから「嫌われること」を恐れない人にならなければなりません。そうでもしないと、気づいた時にはいつだって「いい人の罠」に嵌っているのですから。

 私などは小心者なので、できるだけいい人でありたいと思っていたのですが、『嫌われる勇気』を読んだ時は目から鱗でした。それまではついつい周りの雰囲気に流されて、自分を主張できずにいたのですが、ある時試してみたのです。そしたら、たちまちその場の空気が一変して、何とも穴があったら入りたいような気まずさが身体に纏わりつきました。その気まずさをどう気分転換すればいいのかわからず、慌てて少し後悔さえしました。「断る」ことは冷たいことでも、悪いことでもないはずなのに受け入れては貰えないのです。職場でうまくやって行くためには、上手に断るテクニックを身につける必要がありそうです。そうしないと、自分だけがジタバタして、モヤモヤして、イライラする最悪の事態に陥ってしまうからです。

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