人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

昔の語学テキストを見てみたら

今週のお題「おうち時間2021」

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NHKまいにちフランス語のテキストにグラビアから。

偶然にトイレの思い出が蘇ってきて

 連休を利用して家にある本を読破しようと思いました。でも部屋の中の積読状態の本を手にとっては見たものの、やはり先には進めないと諦めました。読み進めてみると面白いらしいのですが、そこまで気持ちが続きません。それで一番身近に感じられる物、私の場合は昔のNHKの語学テキストを久しぶりに手に取ってみました。それは2018年のフランス語のテキストの応用編で「ふらボラ」という講座でした。フランス人の女性がパートナーの日本人男性と会話をすることで、日本のことを学んでいくスタイルになっています。その中で私が注目したのは、トイレのことでした。男性が女性のために実家の和式トイレをウオシュレットに換えようと言いました。そしたら、女性は「トルコ式のトイレ」には最初は少し驚いたと言って、和式トイレのことをそう呼んだのです。

 どうやらフランス人はしゃがんで使うトイレのことをトルコ式というのだそうです。なぜトルコなのかと疑問に思ったら、「フランス語の中にはトルコのイメージと結びついた表現がいくつかある。現代のトルコというよりも、15世紀にコンスタンティノープルを征服した征服したオスマン帝国への歴史的な強い関心や憧れが背景にあるから」だそうで、そんな事実は初めて知りました。例えば、le cafe a la turque はトルココーヒーで、とても小さなカップで飲む、濃く強いコーヒーです。通常はひいた豆に水を注ぎ、一緒に煮立てます。それから、s'asseoir a la turque はトルコ風に座る、あぐらをかくという意味になります。

 トイレはフランス語でles toilletes で複数形なのですが、単数形のtoiletteはもともと、風呂敷のようなものを指す言葉でした。またこのtoilette を使って、「着飾ること、身なりを整えること」の意味になる表現もあります。私たち日本人にも馴染みのあるオード・ト・アレ(eau de toilette) は香水です。実を言うと、私は外国にあるしゃがんで使うトイレのことを「貝殻トイレ」と呼んでいました。陶器の形があのボッティチェリの「ヴィーナス誕生」で美女が乗っている貝殻にそっくりだと思ったからです。

 私が初めて貝殻トイレに出会ったのは初めての海外旅行で行ったイタリアでした。ローマのテルミネ駅の公衆トイレに長い行列を作って待った挙句の果てに、やっと自分の番が来ました。中に入って、トイレの個室のドアに手をかけようとしたら、みんなが「ロト、ロト」と言って私を止めるのです。何事かと思ったら、どうやら壊れているようなのです。彼らが何を言っているのかさっぱりわからなかったのですが、彼らの身振り手振りで、容易に察しが付きました。少しの間待っていたら、隣が空いたので入ってみると「貝殻トイレ」で外国にしゃがんで使うトイレがあること、それ自体に目から鱗でした。

 それから長い間出会わなかったのですが、3年ほど前にモロッコに行ったとき再会しました。青の町として人気があるショウシャウエンのバスターミナルにはトイレがありせんでした。正確に言うと、あるにはあるのですが、怪しげな男の人がうろうろしているせいで使えませんでした。あの人はどうやらあそこに住み着いているみたいで、「先客あり」の状態でした。観察してみたのですが、誰一人としてトイレに近づこうとはしないのです。10月だというのに灼けつくように暑い気候なので、そんなにトイレが近いわけでもないのです。でもやはり飲み物を飲めば、自然とトイレに行きたくなります。あの時、皆バスを待っていたのですが、もう1時間以上定刻を過ぎているのに来る気配がありません。時間通りには何事も進まないのがこの国の常識らしいのですが、でも待ってさえいれば必ず来る、それは間違いないのです。

 それで、トイレに行っておこうと思った私はすぐ近くにあるホテル兼カフェの店に向かって歩きました。モロッコなのに、なぜか赤い提灯がぶら下がり、店の中は明らかに中国料理店のような光景が展開されているカフェ。そこでトイレを借りるためです。本当は何か注文すればいいのですが、残念ながら時間がないのです。すぐにバスターミナルに戻らなければなりません。店に入ると、すぐにカウンターに行き、そこにいた店主に、「トイレお借りします」と告げて5ユーロ硬貨を置きました。店主の何か言うのを無視して、構わずトイレに直行したのです。この経験から、私は「そこにトイレがあるのは当たり前」という考えは通用しないのだと悟ったのでした。

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