人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

小説に生き方を学ぶ

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自由にひとりで暮らしたい?

残念なことにもう亡くなってしまいましたが、時代小説家の宇江佐真理(うえさまり)さんの小説は斬新なテーマでした。2~3年前に朝日新聞の夕刊に連載されていたものですが、江戸時代に夫に先立たれた大店のおかみさんの自立のお話です。夫に先立たれとはいえ、店はちゃんと息子が継いでいて、世間的には何の問題もない奥様なのです。その人の名前は「梅さん」といって、旦那さんが亡くなって悲しいのもあるのですが、それよりも自由に生きてみたいと思うのです。人から見れば何の不自由もない暮らしですが、気ままな一人暮らしをしてみたいと梅さんは強く思うのです。家に居れば大店の奥様として、また孫の面倒も見なければならないので、自由な生活は送れません。あの時代に一人気ままに暮らしたいなんて思う女の人がいたとしたら、それこそニュースになってしまいます。さらに自分の願いを実行に移してしまうのですから、まさに「新しい女」です。もちろん、家族全員の反対にあって、誰一人梅さんの心情を理解する者はいませんでした。梅さんはさっそく自分の店からそう遠くはない長屋の一間を借りて一人ぐらしを始めます。引っ越しの荷物は最小限度にして身軽な暮らしを楽しもうと思ったのです。好きな時に自分の食べたいものを食べ、寝たいときに寝る、そんな暮らしが夢だったのです。梅さんはお昼になじみのそば屋にふらりと行って、ひとりの気楽さを味わってホッとするのです。

誰もそっとしておいてくれない

せっかくひとりになったのにも関わらず、家の者が訪ねてきて梅さんを煩わせます。嫁が訪ねてきて家に帰ってくれるように頼まれたり、外に出ている息子の隠し子を預かったりと気が休まるときがありません。嫁に行っている娘たちもからかい半分でやって来て、あまり会いたくない相手なので不愉快な思いもするのです。そんな生活の中で梅さんは気付き始めるのです、自分のお金がこのままの生活ではすぐになくなってしまうことに。なにせ江戸時代なので、現代のように年金などというものはなかったでしょう。だから何らかの方法でお金を稼ぐしかないのだと考えて、「商売でも始めなければ」と思い始めるのです。それでこれからどうなるのだろうと期待していたら、この小説の著者は急逝してしまわれました。

自由な生活にはお金が不可欠?

梅さんがあれからどうしたか、何をしたかを想像してみたら、けっこう面白いですよね。あの時代はインターネットなんてないから、ネット販売はできないかもしれません。でも大店の奥様だったのですから、商売については素人よりははるかに知識はあったはずです。だからちょっとした商売を始めた可能性は大いにありますが、それが成功しなければ家に帰るしかないのです。自由な生活を謳歌するにはお金が不可欠なので、お金を求めて一生懸命にならざるを得なくなります。そして最後にはそれが生きがいになるのかもしれません。

mikonacolon