人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ワクチンの限界を知る

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▲チリのパタゴニアを代表するトーレス・デル・パイネ国立公園。NHKまいにちスペイン語テキスト5月号から。

今のイスラエルは日本の未来の姿だと思ったほうがいい

 先日の日本経済新聞の記事を読んでなんとも暗澹たる気持ちになってしまいました。それはイギリスのフィナンシャルタイムズのエルサレム特派員であるメフル・スリバスタバさんの「ワクチンの限界意識を」というタイトルの記事でした。6月のある日彼はテルアビブの自宅でロンドン出張の準備をしていました。そのとき自宅にはマスクは一枚もなく、街中の店にも全くないことに気が付いたのです。つまり、その時点でもはやマスクは必要ない物になっていたのです。それほどワクチン先進国のイスラエルでは接種が進んで、近所の薬局のおばさんに「コロナは終息したのになぜマスクがいるの?」と笑われてしまいました。そして、そう言いながらも店の奥から見つけてきてくれた残り物のマスクを手渡してくれたのでした。

 その後彼はワクチン接種完了者のコロナ感染を経験し、1カ月後にテルアビブに戻ってみたらなんと街はマスク姿の人たちで溢れていたのでした。たしか3月中旬にはロックダウンが解除されて4月にはマスク姿が街から消えてみんながパーティーをして楽しんでいたはずです。どうなっているのか、どうやらワクチンの効果がなくなりつつあるらしいのです。昨年の12月から高齢者のワクチン接種が開始されて、6か月以上が経過しました。日本でもワクチンの効果はアルファ株だけでなくデルタ株にも効くのだと連日のようにテレビで専門家が念を押していました。ところが、イスラエル保険省はファイザー製のワクチンの効果を94%から64%に下方修正したのでした。

 あんなに自信をもって断言していたのに、今更違うと言われてもこちらは何を信じていいのかわかりません。ワクチン接種率がほぼ完全と言えるイスラエルの現状は日本の未来の姿であることは間違いありません。だとすれば、まだまだ日本は感染者が増え続けると誰もが予想できます。それに日本にはまだまだワクチン難民と呼ばれる人が大勢いる現実があります。今の状態が続けば、本物の非常事態になってしまいかねません。戦時中のような、自分は関係ないなどと言ってはいられない事態、それこそ日常生活にも支障を来たすような日が来るのかもしれないのです。

 8月に入ってイスラエルでは一日の感染者が6千人にもなりました。この事態を打開するべくベネット首相は高齢者の3回目の接種を開始しました。これまで77万人が接種を終えており、接種した人は数日で抗体値が上昇していることもわかりました。特派員のスリバスタバさんが一番言いたいことは、ワクチンは万能ではなく、限界があるということです。「今のイスラエルから学ぶべき教訓があるとすれば、コロナは終息していないということに尽きる」と断言し、次は冬がやってくると警戒しているのです。

 このようなイスラエルの希望が持てそうもない現実を知ってしまうと、思考停止に陥ってしまいます。来年こそは明るい未来が来ると思いたいのに、目の前の現実を眺めていると到底無理なのです。ワクチン接種が進めば何とかなるという、ワクチン頼みでは残念ながら何も解決しないのだと思い知らされます。では、根本的に何をすればいいのかを頭のいい人に教えてもらいたい、そう切実に願ってしまいます。そして、まずは自分の心をなんとか宥めて、気をそらして毎日をやり過ごす方法を見つけなくてはなりません。この先も当分何の変哲もない暮らしに新しい風を入れるための最適な手段であった海外旅行を我慢しなければなりません。できれば遠くへ行きたい!でももはや「海外旅行」という言葉は手が届かない懐かしい物に変ろうとしています。

 違う側面から見てみると、今こそ思い込みを捨てて自ら変わる機会が与えられたとも言えます。「移動しなければ、気分転換ができない」などと言うステレオタイプな考え方を捨てて、家に居ながらも想像力の力で十分満足できてしまう自分に変わるチャンスでもあるわけです。そんなことできるはずがないと決めつける前に、試してみなければなりません。さもなければ、きっと心の平安を失ってしまうかもしれませんから。

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