今週のお題「あったか~い」
▲クスコの祭りで民族衣装を着て踊る若者たち。NHKまいにちスペイン語テキストから。
冬になると、暖かいカフェを探し回っていたが
日に日に寒さが厳しくなってくると、やっぱり欲しいのはあったか~い場所です。あったか~い場所というと、そんな天国みたいなところを見つけるのが得意なのはネコです。彼らはいつだって、まあ、実家のネコに限ればの話ですが、人間様よりよっぽど暖かい場所に陣取っているのです。日が燦燦と差し込む実家の居間の窓際にドデ~ンと身体を弓なりに延ばして寛いでいます。羨ましくなるほどりラックした姿はまさに「至福の時」なのでしょう。それなのに、人間ときたら彼らと比べるとあったか~い場所を捜すのが下手くそなのです。これも私だけにしか当てはまらないのかもしれませんが、冬に暖かく過ごせるカフェを見つけるのは大変なことでした。
「だいたい冬に暖かいカフェを見つけるなんて無理じゃない」と友だちは言うのです。彼女に言わせると、カフェはどこも寒くて、じっとしているとなんだかスースーしてきます。どこからか隙間風でも吹いてくるかのように感じてしまって、落ち着かなくて堪らず帰りたくなってしまうのです。店によってはひざ掛けや小さな毛布が用意してあるところもあるのですが、たいして役に立たないことが多いです。ビルというのは元々温まらない構造になっているのでしょうか。そう言えば、クリーニング店に勤めていた友だちがこんなことを言っていました。「小さな店なのにどんなにエアコンの温度を上げても部屋が暖かくならないの。だから冬は寒さと戦うの」。だから彼女は店に電動ポットを持ち込んで、熱いお茶を飲んで寒さをやり過ごしているのです。
先日も新聞のエッセイで作家の万城目学さんが、コンクリート打ちっぱなしのマンションは寒すぎると書いていました。雑誌で見る限りおしゃれだとかよさそうに見えるマンションが実は冬に住むには辛すぎるのです。万城目さんはそんなこととは露知らず、住んでみて初めて真実を知りました。そう思うのは自分だけかと思ったら、周りの人に確かめてみたら皆同じ意見でした。冬に遊びに行ったら寒くて震えた家、というかマンションで思い出したのは高校の時の友だちの家でした。川沿いにあって、もう地下鉄の駅を下りたときから自分の住んでいる地域との温度差を感じていました。頬に当たる風が冷たすぎるなあと思っていたら、向かった先の家の中も同様でした。角部屋で三方を窓に囲まれた部屋は明るくて眺めもいいのですが、勘弁して欲しいくらいに寒かったのです。もちろんエアコンは点けてあるのですが、効いていないようで皆震え上がりました。食事中もなんだか落ち着かず、それでも何とか食べ終わると、勇気のある誰かが「悪いけどもう帰る」と言い出しました。その言葉に私たち皆は救われて、早々に退散したのです。
カフェの話に戻ると、友だちに暖かいカフェなんてあるわけないと言われても、カフェ探しを諦めたわけではないのです。自分の家以外の場所に居場所を見つけることは大事なことだからです。たとえ短い時間でも、ほんのひとときでも別の空間で過ごすことは気分転換になり、心の洗濯の時間だからです。私の好きな席は窓際か隅っこで、壁に寄りかかれるような感じで、側に観葉植物でもあればなおいいのです。窓際なら、道行く人の姿を眺めて、人間ウォツチングをするのが好きです。以前通っていたカフェは電車の線路沿いにあって、窓から上の方を見たらすぐに線路が見えました。でも目の前にはミニ庭園が作ってあって、草花が植えてあるのでときどき蝶や蜂もやってきました。そこで花や虫の様子を眺めながらぼお~っとするのが大好きでした。
試行錯誤を繰り返しているうちに、だんだんとエアコンの風向きによっても身体に感じる暖かさは違うのだと気付きました。一番ベストだと思うカフェを見つけたと思っていたら、もう行けなくなってしまいました。その最大の原因はコロナウイルスの感染症の流行です。この一年半近くは、残念ながら店の前を通り過ぎるだけの生活なのです。
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