人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

山崎福也選手

プロ野球は分からないけれど、なぜか気になって

 私は目覚ましをICレコーダーにセットしているので、NHK第一ラジオのアナウンサーの声で目を覚ます。毎朝5時15分にその日のトップニュースを聞きながら布団から出るのが日課だ。確か今日は「吉田正孝選手はドラフト一位でオリックスに入団し、一年目から活躍し・・・」などと言っていたので、たぶん大リーグへの挑戦の話なのだろう。オリックスと言えば、先ごろヤクルトとの日本シリーズで第2戦と第6戦に先発した山崎福也選手のことが気にかかる。なぜかと言うと、山崎選手の下の名前がいつも「福」となっているからだ。断っておくが、私はプロ野球ファンでも何でもないが、同僚のひとりが物凄いジャイアンツファンというか、プロ野球に興味津々なので、話を合わせるために日本シリーズをついつい見てしまったのだ。

 明大出身の山崎選手にとって神宮は慣れ親しんだ庭のようなもの、なので緊張はしなかった、いやそれどころか嬉しかった、とご本人はインタビューで答えている。「日本シリーズで2度も投げられるなんて、監督には感謝しかない」と素直に喜んでいた。私がなぜ山崎選手に注目したかと言うと、名前が福也なのになぜか、実況のアナウンサーは「山崎たつや」と連呼していたからだ。そうか、もしかしたら福也と書いて「たつや」と読むのかもしれないが、本当のところはどうだかわからない。こうなると、私の検索癖がメラメラと燃え上がった。ネットで調べてみると、山崎選手の名前は「さちや」だった。つまり、山崎福選手がタダの「山崎選手」だったら、私の関心はそれほどでもなかっただろう。

 折しも日経新聞朝日新聞のスポーツ欄には山崎福選手の写真とインタビュー記事が載っていた。まさに日本シリーズのヒーローで、優秀選手にもなった。その記事の中で、特筆すべきは、「プロ野球は重圧のかかる仕事だけど、僕の場合はノンプレッシャー、一番楽しくできます。昔から打撃には自信があった。打撃練習はほとんどしてないです」との発言だ。それもそのはず、経歴を見てみると、日大三高時代はエース兼5番打者として活躍していた。その後明大に進み、2014年秋のドラフト一位でオリックスに入団した。ある新聞記事では「今シーズンは時には先発、またある時は中継ぎとまるで便利屋のよう使われているようにも見えたが・・・」と皮肉交じりのことを書かれていたが、本人は全く動じていない。日本シリーズで投げるのは宮城や田嶋であって、自分ではないと思っていたから、それだけに先発に指名されたことが素直に嬉しかった。

 揺るぎない自信と誇りに満ち溢れた山崎福選手には秘密があった。それは日大三高に入る前に脳腫瘍の手術を受けていたことだ。ネットの記事によると、「自分はその時、新しく生まれ変わったと感じた」そうで、「今季から、1イニング登板に付き一万円を寄することにしました。結果を残すことしか僕にはできないけれど、頑張っているプレーを見てもらいたい」とインタビューでも自分の思いを口にしていた。それから、ファンに対しては「普通なら誰でも、もっと強いチームを応援するじゃないですか。本当にありがたいですよね」と感謝の言葉を忘れない。

 誰もが注目する日本シリーズの先発投手と言えば、芝居で言えば主役のようなもの。さぞかし心中はドキドキで冷や汗の連続かと思いきや、山崎福選手はそんなプレッシャーとは無縁で、「投げられて嬉しい」という純粋な気持ちしかなかった。これにはさすがに仰天せざるを得ない。世間の評価はどう見てもヤクルトが優勢で、投手はいいけど打てないオリックスには皆イライラさせられていた。たまに塁に出ても、後続があっけなくアウトにされて点がなかなか入らない。なんとも情けないので、自分の子供を応援するように、祈るようにオリックスを応援していた。ヤクルトの村上がホームランを打ちませんようになどとも念じていた。

 私は大事なことを忘れていた、プロ野球選手は皆”超人”なのだということを。この超人いう言葉は昔NHKの特集番組で使われていて、普通の人と一線を画している”選ばれし者”という意味だった。よく考えてみると、プロ野球の選手は皆ドラフトで選ばれた、稀有な存在だということに変わりはない。打てなくても、コントロールがなかったとしても、そのレベルは普通の人には想像もつかないのだ。だとすると、飯尾和樹さんの言うように、「普通の人である我々が、気安く、どうしてあそこで打てないかなあ、とか、なんでフォアボール出すかなあだなんてことは言えない」のだ。

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