人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

油淋鶏と出会う

初めて食べたユーリンチー、美味しかった

 すでに既述したようにお盆は田舎で過ごした。いつになく外食が多い日々で、滅多に行く機会がないような場所にも義姉のミチコさんは連れて行ってくれた。まずは小籠包が美味しいと評判のお店で、ピアゴとかサンシンだかというショッピングセンターの中にあった。その近くに兄弟の住んでいるマンションがあるのだが、会社にはよく立ち寄っていたものの住まいには用事もないので行かなかった。友だちや知り合いに聞いただけで、実際行ったことはなかったので、店の場所はすぐには分からなかった。

 車で実家から20分のところにある S市は田んぼや畑の中に住宅街が広がる何の変哲もない地方都市だった。道路には誰も歩いていないので、寂れた町だとばかり思っていたら、それは勘違いだった。車でしばらく走っていたら、突如として巨大な建物が現れた。それがショッピングセンターで、駐車場は満杯でどこにも空きがなかった。ミチコさんが諦めて帰ろうとしたその時、幸運にも目の前で一台の車が出て行こうとした。ラッキーと心の中で叫んで、間髪入れずにその後に車を入れた。

 さて、お目当ての小籠包の店は入手した情報によれば、ショッピングセンターの2階にあるらしい。ひとまず階段を昇って2階に行ってみたが、何しろ広すぎて、どこに何があるやら見当もつかない。巨大なフードコートもあって、ウロウロしていたら迷子になりそうだった。意を決して、ミチコさんが傍らにあるゲームセンターの店員に店の場所を尋ねた。するとその人はすぐにわかったのか、前方にある通路を指さして、「まっすぐに行けば看板が見えます」と教えてくれた。

 ウインドーにあるメニューから小籠包の1380円のセットを頼んだ。テーブルに座って待っていると、最初に運ばれてきたのは油淋鶏(ユーリンチー)だった。早速食べてみると、鶏のから揚げが表面はカリカリしているが、中は想像以上に柔らかい。口に入れて噛んでみると、なかなかイケル味なので飽きなかった。長ネギとニンニクが入ったタレにつけて食べるらしく、初めての私はミチコさんの真似をする。タレはもっと酸っぱいのかと思ったらそうではなかったので拍子抜けした。正直言って、これはから揚げとたいして変わりないなあとも思ったが、いやいや、から揚げよりもはるかにさっぱりしていて食べやすい。それが初めて油淋鶏を食べた私の感想だった。

 油淋鶏に舌鼓を打っていると、そこへお目当ての小籠包とチャーハンが運ばれてきた。小籠包は3個でいいのだが、問題なのは、一人前は有にあろうかと思われるチャーハンだった。普通の感覚ではセットメニューなのだから、だいたいは半分程度が妥当の量なのだが、どう見ても普通盛だった。ミチコさんと私は、「これじゃあまるで孤独のグルメの松重さんみたい!」と仰天した。とてもじゃないが、底なしの胃袋を持つあの人の真似はできないとハナから諦めた。私たちはまずは本命の小籠包から堪能することにした。噂に違うことなく、小籠包は一口噛むと肉汁がしたたり落ちた。そう言えば、惨敗だった台湾旅行で食べた小籠包は中の餡が硬くて潤いが全くなかった。日本にも支店がある有名店だったが、連日大勢の客が押し寄せるためか対処できなかったのだろうか。一緒に旅行に行った姉も「中国で食べた小籠包はもっと肉汁がいっぱいで、こんなんじゃない!」と憤慨していた。だからこそ美味しい小籠包というものを食べてみたかったのだ。

 最後に残すわけにもいかなので、チャーハンを食べようとしたが無理だった。ところが、ミチコさんは何でも捨てられない性格なので、「残すなんてもったいない」と頑張ったが半分ほど食べて力尽きた。会計して店を出て、「あのチャーハンは名前のわりにはごく普通のチャーハンだったね」と言ったら、ミチコさんは大きく頷いた。

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