無知魍魎とした別世界に辟易
3か月ほど前に韓国ドラマ『ペントハウス』を始めて見たときは、荒唐無稽な設定とはいえ、とても面白そうだと思った記憶がある。ヘラパレスに住む金持ちの家にミン・ソラという家庭教師の女子学生がやって来るが、実は彼女はまさかの中学生という設定である。中学生なのに同じ年頃の子供に数学を教え、声楽でも抜群の歌唱力を発揮する。この天才的な頭脳と音楽的才能を持っている彼女は身寄りがなく、天涯孤独で、焼肉店でアルバイトをして、生計を立てていた。
だが、懸命に生きている彼女を金持ちの家の子供は馬鹿にし、理不尽にいじめては楽しんでいるようだ。そんな彼らに彼女は「どうしてあなたたちは何でも持っているのに、何も持たない私をいじめるの?そんなに暇なの?」と激怒する。お金があれば満たされて、さぞかし満足して毎日を送っていると思いきや、現実はそうでもないらしい。彼らは優位に立ち、自分たち以外は存在しない、つまり、人間だとは思っていないから、平気でソラを貶めて笑いものにしていた。いくらソラが優秀でも、貧乏である限り絶対認めるわけにはいかない。親の権威をかさに着ているだけだが、親の権力は即子供にたちまち伝染して、どうしようもない怪物のような子供たちを生みだしていた。
ヘラパレスという富と権威の象徴のようなマンションに住む住人同士の秘密の情事をソラは目撃してしまう。その現場をスマホで撮影し、ある条件を提示して、脅したら、なんと殺されてしまった。まさか、ソラは殺されるなんて夢にも思わなかっただろう。ソラを殺したのは、意外な人物だが、そこまで追い詰めたのは、ヘラパレスの住人一同で、彼らの行動すべてに眉を顰めざるを得ない、というか見ていてうんざりする。金持ちというのは、何と厚顔無恥で、冷血な輩なのだろう。人ひとり死んだのに、誰一人その死に恐れおおのき、悼むという素振りさえ見せない。彼らが思案したのは、できるだけ早く死体をどこか別の場所に移すことで、警察と関わりたくないからだ。さっさと死体を片付けて、何もなかったことにする、彼らの頭の中にはそれだけしかなかった。子供が子供なら、親も親で、どうしようもない。
その中でただ一人まともな考え方をしていたのは、双子の母親のスニョンさんで、実はミン・ソラの実母という設定になっている。彼女はソラに優しく接していたが、この時はまだ我が子だとは知らなかった。だが、ある日、夫の書斎で、自分の産んだ子供が生後まもなくすり替えられて、施設に送られたことを知ってしまう。病院にいる意識不明の娘は偽物だった。彼女の娘は夫の子ではなく、死んだ婚約者の子で、夫はその婚約者を射殺した張本人だった。ここまで来ると、訳が分からなくなるが、夫はその偽物の子供を長い間、14年もの間、スニョンさんに娘だと信じさせていたのだ。どうしてそんな大金をかけてまで、そんなバカげた事をする必要があったのか。呆れると言うか、疑問だらけで頭が機能しなくなるが、義父が娘に送った土地の権利書のためだったとは!とにもかくにも、このドラマは常識を大いに覆し、殺人も御構い無しで、血も涙もない。一人殺すも二人殺すも変わりない、無法地帯でやりたい放題で、最近ではストーリーの奇抜さについて行けなくなっている。今はこれからどうなるかという楽しみはなく、ただどう落ち着くのか見守るというスタンスでドラマを見ている。
応援していたミン・ソラが死んだところで、落胆したが、思い直して見続けたら、なんと実母のスニョンさんまで殺されてしまった。ドラマが続編になった現在では、懸命に生きていた天才的な歌唱力を持つロナも殺されて、ショックが大きい。一体全体これからどう展開するのか、このハチャメチャをどう収拾するのだろうか、その点だけに興味が湧いてきた。
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