人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

大英博物館に行く

予想以上に公園が多いことに気付く

 そもそも、なぜブランズウイックショッピングセンターを目指したかと言うと、それが大英博物館に行く途中にあるからだった。周辺の地図から察すると、10分ほど歩けば、今回の旅の目的の場所である大英博物館に行けるはずだった。だいたいがこの博物館に行こうと思ったのは、単純に入場料が無料だったからで、他にもっともな理由などなかった。「タダなのだから、行かなくちゃ」とばかりに、雨が多く、物価高と噂に聞くロンドンにやって来た。大英博物館に行く途中で、いくつもの緑あふれる公園を通りすぎた。予想以上にロンドンは公園が多く,とてもここが大都会だとは思えない。

 ブランズウイックのすぐ目の前には、コーラムズ・フィールズがあり、大英博物館のすぐ近くにはラッセル・スクエアや、ブルームスベリー・スクエアもあった。特に、ラッセル・スクエアは私にとっての大英博物館に行く目印になってくれて、とても助かった。冷たい雨が降りしきる中、ふと見ると、長蛇の列ができていた。そこが入口だとは知らない私はリュックを背負い、ダウンジャケットのフードを被って、スマホを凝視している男性に尋ねた。「ここは大英博物館の入口なのですか」

 そこはガイドブックで見たことのある、あの大英博物館の威風堂々とした正面の入口ではなかったが、入口には間違いない、北門の入口だった。ちょうど真裏に当たる場所だが、私のルートではこちらが一番近くて、便利だった。だが、帰りは正門からしか出られなくて、ぐるっと大回りをしなければならず、大英博物館の建物の大きさを思い知った。日本では考えられないが、ロンドンにある博物館やギャラリーはほとんどが入場料が無料だった。なので、絵画に目のない人なら、まさに垂涎物の環境にあると言っても過言ではない。残念ながら、私はその部類には属さない人間だが、無料という絶好の機会を見逃すなんてことは到底できなくて、ついついロンドンに来てしまった、というわけなのだ。

 最初の計画では、ロンドンには4泊するつもりで、連日、大英博物館に通うつもりだった。だが、そのうち欲が出て来て、他の場所、例えばテムズ川のあたりでも行ってみてはどうだろうか、とふと思った。テムズ川と言えば、コロナ禍に読んだ小説『ペスト』では、ペストが大流行したロンドンではテムズ川には死体が山積していたと記述されていた。そんなイメージが頭の中に浮かんできたが、モダン・テートというギャラリーの6階のレストランからはテムズ川の景色を一望できると聞いて、その気になってしまった。結局、不真面目極まりない理由で、大英博物館を訪れた私は、一日目にして飽きてしまった。もちろん、ロゼッタストーンとか、エジプト彫刻のラムセス2世には興味津々だったが、もうそれだけで満足してしまった。

 それよりもグレートコートと呼ばれる、ミュージアムショップやフードコートがあるエリアが楽しかった。実を言うと、この時の私は胃の調子が悪くて、食べたくても食べられない状態だったが、それでもお腹は空く。サンドイッチやサラダが並ぶ棚を見ていたら、3種類のサンドイッチがある中で一番売れていたのがマスタードチキンサンドで、残り僅か一個だった。それを買って、食べてみると、確かに美味しくて、売れ行きがいいのに納得した。全部食べたかったが、2個あるうちの半分しか食べられない。そのサンドイッチの値段は6.7ポンドで日本円にすると、1300円くらいだろうか、それでもこの値段はロンドンでは良心的で安い部類に入るのだと、後から思い知ることになる。

 大英博物館は一日目で満足してもう行かなかったと書いたが、実はそれからもう一度だけ行くことになった。その目的はなんと、手持ちのポンドを使い切るためだった。要するに、ロンドンは想像以上に支払いがカード優先の社会で、現金が使えなかったからだ。それで、大英博物館ミュージアムショップで、家族や友人のためにお土産を買った。22ポンドのTシャツ3枚と、見た目も鮮やかなプリントの12ポンドするロゴバックなどを買って、なんとかポンドを使い切ることができた。そのことを事前に知ることができたら、よかったのだが、ガイドブックには一言も書いていなかったので、どうしようもない。後の祭りである。

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