人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

大英博物館からテムズ川を目指す

人の親切に助けられ、テムズ河畔に

 大英図書館に行く道は旅行者にはとても分かりやすかったので、何度も通ううちに欲が出た。もっとも、大英博物館にはロンドン滞在2日目と、お土産を買うための最終日の2回しか行ってはいないが、お目当ては道すがらにあるTESCOというスーパーだった。ある日、地図を見ていたら、大英博物館から、南に1㎞くらい行くと、テムズ河畔に行けることを発見した。だが、穴のあくほど地図を見たところで、分かりやすい1本道は見つからないし、地元の地理に不案内は私などはすぐに迷ってしまうのが関の山だ。だが、誰かの助けがあれば、なんとかテムズ川にたどり着けるはずだった。

 地図で見ると、テムズ河畔に行けさえすれば、すぐにロンドン・アイとロンドン・ダンジョンが見えてくるはずだった。ということは、向かい側にはあのウエストミンスター寺院があるということ。地下鉄ではなく、自分の足で歩いてそこに行けるだなんて、なんてすばらしい経験なのだろう。もちろん、帰りは地下鉄に乗ってホテルに戻ればいい。この時の私は大英博物館で古代の有名な所蔵品を見て回るより、街歩きの方に興味があった。最初は少し、無謀かなあと思ったが、テムズ川に向かう場所には公園や博物館が点在していて、そこを目印にすれば、なんとかなると判断して決行した。

 まずは大英博物館のすぐ近くにあるブルームズベリー(公園)から、地下鉄の駅のHolbornに向かって歩くと、スーパーマーケットのセインズベリーを見つけた。たしか、そこから少し行くと、ジョン・ソーン博物館があるはずだった。そして、さらに500mほど行くと、テムズ川沿いにコートールド美術館がある。そこを目指して、進めば上手く行くとそう信じていた。実際は、地下鉄のHolbornの駅から、地図を頼りに歩き始めるが、迷いそうになり、花屋のスタンドのおじさんに道を聞いたりして、やっと博物館があるらしき場所にたどり着いたが、隣接するリンカーンフィールズという公園が広すぎて、何処にあるのかわからない。それでまた、人に聞くのだが、その頃はいったい今自分がどこに居るのかわからなくなった。

   万事休すだった。地図上ではあともうひと踏ん張りでテムズ川に着くはずなのに。どっちに行ったらいいかすらわからない私は、ただその場に立ち尽くすしかなかった。そんなとき、書類を片手に制服を着た中年の男性が通りかかるのを目撃し、その人に助けを求めた。「テムズ川はどっちの方向ですか」、開口一番私は彼にそう尋ねた。すると、彼は少し困ったような顔をして、「私についてきて」と言ってくれたので、彼の後をついて行った。路地を入ると、何度も曲がったりを繰り返して、10分ほど歩いて広い通りに行きあたった。そして、通りを指さして、この道を真っすぐ行って、2番めの角を曲がれば、テムズ川が見えてくると教えてくれた。

  私は彼に言われた通りに角を曲がったが、それでも道があっているかどうか不安になり、また元の場所に戻ってきた。それで、今度は、立派な建物の前に立っている警備員と思われる男性にテムズ川のことを尋ねるのだが、彼はどうやら私の言うことが分からないらしく、何度か聞き返される。それでも、なんとか理解してくれたのか、やはり、最初の男性と同じ道を教えてくれた。間違いない、私の判断は間違っていなかった。大英博物館からテムズ川までの街歩きは最高に楽しかった。

 それから、私は前日に行けなかったバッキンガム宮殿を訪れた。「訪れた」と言っても、中に入ることはできないので、鉄柵の間からバッキンガム宮殿の敷地を覗き見していただけだ。大勢の人が何やら中を興味津々でじっと見つめているので、何ごとかと気になったのだ。だが、実に幸運なことに、騎馬隊や衛兵の交代式を見ることができた。衛兵は子供の頃から思い描いていた真っ赤な制服ではなくて、グレーのコートを着ていた。何より意外だったのは、バッキンガム宮殿がバッキンガム・パレスと呼ばれ、白い上品な建物だったことだった。

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