人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ロンドンのスーパーで

店員さんの親切に感激

 ロンドンのセントパンクロス駅前のホテルを予約したと、勝手に思い込んでいたら、実際にはキングクロス駅の目の前だった。この駅はあの有名な「ハリーポッター」に出て来る駅で、ユーロスターが発着するセントパンクロス駅と道路一つ隔てて隣り合わせに並んでいた。午後3時ごろにホテルにチェックインした私は、とりあえずスーパーのあるショッピングセンターのブランズウィックを目指した。ホテルの部屋にはペットボトルのミネラルウォーターが2本用意されていたが、そのうちの一本は炭酸水だった。私はダメだが、どうやら外国人には炭酸水を好んで飲む人が多いらしい。このことはずうっと前から気づいていたことだった。だが、今まで泊まったホテルではすべてガスなしだったので、少し戸惑ったというよりも、これは困ったことになったと思った。

 不案内なロンドンで何の当てもなくスーパーを探すのは時間の無駄だし、疲れてしまうと考えた私は、事前にGoogleの航空写真で、ブランズウイックがあることを知った。ホテルを出て、駅前の大通りを大英図書館の方向に進み、左に曲がって、10分ほど行くと、「ブランズウイック」の看板が見えて来た。ここは、カフェやブテック、飲食店が入っているショッピングセンターのようなところで、一番奥にスーパーマーケットがあった。スーパーの名前は「WAITROSE」で、ロンドンのスーパーは初めてなので、興味津々で店内を見て回った。欲しいものは水と果物、特にオレンジで、風邪気味なので水分補給のためだった。野菜と果物のコーナーに行くと、あれあれ、パリのスーパーでは一個単位で買えた果物は日本と同様に何個かでネットに入れられていた。

 私はオレンジが2,3個あればいいのだが、仕方がないのでネットに入った物を買うことにする。その値段は3.5ポンドで、断っておくがユーロではなく、ポンドで、日本円で1ポンドは197円程度だから、約200円で計算すると、700円ぐらいだろうか。恐ろしく高いが、この程度は想定内だから、気にしないふりをする。今は日常ではなく、特別な日々なのだとわきまえる。ホテルの部屋にコーヒーカップはあったが、日本から持ってきたフリーズドライのホワイトシューを入れる大きめのマグカップが必要だった。家庭用品の売り場に行くと、2,3種類のカップがあったが、そのうち一番安い物を手に取ると、それでも8,5ポンドだった。日本円にすると、1600円以上するが、よく見ると、カップの底には「JOHN LEWIS」の文字があって、どうやらブランド物のようだ。カップに描かれているのは、緑あふれる公園か何かで、ジョギングをしたり、自転車を漕いだり、あるいはヨガをする人たちだ。まさに健康志向のアーバンライフを実践する人たちで、ロンドンにピッタリのイラストだった。値段はともかく、私はこのカップが気に入って、これを自分へのロンドン土産にしようと思った。このカップを見る度に、ロンドンでの僅か4日間の日々を思い出すだろうから。日本でなら、百円ショップでも買えてしまうマグカップだが、やはりロンドンで買うからこそ価値がある。

 さて、次は支払いということで、レジの列に並ぶのだが、なんと、セルフレジだった。パリでのように店員さんが座って会計をしてくれるような場所はなかった。まあ、セルフレジでもいいし、やり方は日本のと同じだから、戸惑うことはないが、最後の支払いの段階で困った。全然知らなかったが、ロンドンはほとんどの店がカード払いで、現金でもOKのところは少ないのだ。すぐに係りの人がやってきて、「うちは支払いはカードのみなんです」と言われたので、クレジットカードを取り出した。その時、私がマグカップを持っているのを見ると、その人は「それを何かで包まなきゃダメですね」と言うと、何処かへ行ってすぐに戻ってきた。手には店の広告の新聞紙か何かを持っていて、私からカップを受け取るとそれをきちんと包んでくれて、「これなら大丈夫ですね」と渡してくれたのだ。この間、私はただ言われるままだった。要するに、この時の私は期待もしなかった親切を受けて、驚き、かつ感激していたのだった。

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