人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

捨てられない人

消費期限が切れていても捨てられない

 田舎の知り合いから送ってもらった新米が底をついた。さて、どうしよう。これから何を食べればいいのだろうかと頭を悩ませている。実は、去年の10月頃に送ってもらった米がまだ10kgほど残っている。それなら、その米を食べればいいと思うだろうが、いかんせん、その米はナフタリンのような匂いを放っていて、どうにもこうにも食べる気にはならない。まるで、毎日のご飯が罰ゲームのようになりかねない。そんな状況を想像しただけで、悪夢を見ているような気分になる。最初は熱を加えれば、何とかなるだろうと高を括っていたら、炊きあがっても悪臭は消えなかった。

 それで、古い米を何とか美味しく食べる方法がないものかとネットで検索してみた。すると、料理酒を少し入れて炊飯すると、臭いが消えるとの情報を得た。その事を帰省した時に、義姉のミチコさんに話したら、「貰い物の料理酒が何本もあるからあげるよ」と言われた。ミチコさんは全く使わないので、欲しいなら使ってというニュアンスだった。それを聞いた私は大いに得した気分になり、先日届いたダンボール箱を開けて嬉々として料理酒を取り出した。料理酒は4本あって、早速流し台の下に入れに行こうとしたが、ふと消費期限が気になった。よく見ると、2023年?だったり、あるいは2024年の10月だったりと、だいぶ年期が入っていて、どれも期限切れだった。喜んだのもつかの間、不幸のどん底に突き落とされた。

 だが、ミチコさんに不都合な真実を訴えたところで、「まだまだ使えるから大丈夫」と平然と言われてしまうことはわかっている。そう、ミチコさんは物を捨てられない人なのだ。自分のお金で買ったものは、食品と言えども、賞味期限や消費期限を過ぎていても、もったいなくて捨てられない人なのだ。実際、消費期限を過ぎていても、平気で食べていて、それでもお腹を壊したりしないで元気なのだから、仰天せざるを得ない。ミチコさんは去年の12月に冷蔵庫を新しいものに買い替えた。その際、消費期限切れの食品を捨てようとして、ゴミ袋に入れたものの、もったいなくてどうしても捨てられなかった。見た目で明らかに腐っているものは捨てるしかない。何しろ18年もの間溜め込んだ食品が次々に出て来ても、それでもまだ、「もったいない」という思いが顔を出し、とりあえず「とっておこう」としていた。

 一体全体、古い食品を取っておいて、どうするの?と言いたいところだが、急いでその言葉を飲み込んだ。要するに、食品もミチコさんにとっては自分がお金を出して買ったものに変わりなく、鮮度がどうとか、食べられるとかそうでないとかは関係ないらしい。要するに、食品の消費期限は自分自ら判断して決めるというポリシーなのだ。そう言えば、年が明けて、実家の冷蔵庫を開けたとき、牛乳の消費期限を何気なくみたら、去年の12月18日だった。以前の私なら卒倒するところだが、免疫があるせいか意外にも平静でいられた。おそらく、「まだ、大丈夫」という感覚の基準から判断して、安心して?飲んでいるのだろう。

 何年か前のことだが、ミチコさんの舌の感覚は大丈夫だろうかと本気で思ったことがある。帰省したある朝、マーガリンを塗ったトーストを食べたとき、舌がひりひりするのを感じた。それに、なんだか口の中が苦い。「このトーストは苦くて、美味しくない」と言ったら、「そう?何ともないけど」と返された。その時私はミチコさんはどうしてこんな苦い物をたべられるのだろうかと不思議で仕方がなかった。家に帰ってから、ネットで検索してみたら、マーガリンが腐っていたことが分かった。私が感じた舌のひりひり感は、サリチル酸という物質のせいだった。

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