
もう正常に戻っていたなら、それでいい
土日と続けてプールのトラブルに巻き込まれた私は、市民スポーツセンターのプールに行く気がもうなくなっていた。月曜日に別のプールのコズミックに行こうとしたら、スポーツセンターの前にプール友だちのマサコさんがいるのを発見した。思わず駆け寄り、声を掛けると、マサコさんはいつものように世間話をし始めた。話を途中で遮り、一番伝えたいプールの話を切り出した。プールの設備の不具合は土曜日から始まっていて、日曜日には皆がプールに入らずにさっさと帰って行ったことなどを話すと、俄かには信じられない様子。9時の開始と同時に監視員さんが、いつもの挨拶に加えて、「室温、水温共に上がらない状況です。その事をご承知おきの上でご利用ください」と詫びていた。
「今日は凄くお腹が痛いの」と少し顔をゆがめて訴えるマサコさんは、「そりゃあ、困ったわねえ。どうしよう」と困惑している。そんなとき、もうひとりのプール友だちのセツコさんが現れたので、事情を話すと、「そんなバカなことがあるの?でも、プールはやっているんでしょう」と全く気にもしない。スポーツセンターの入口の方に行こうとするので、「受付で正常に戻っているかどうか確認してから、入った方が良いですよ」と慌てて声を掛けざるを得なかった。内心、あんな不具合が数日で元に戻ることなどありえないと思ってはいたが、「水温が低くても、入れるなら問題ないじゃない」と言わんばかりのセツコさんの態度には驚かされた。全く動揺しないセツコさんに、「更衣室に冷房が入っているんですよ」と追い打ちをかけると、ようやく足を止めて私の話に耳を傾けてくれた。
二人と別れて、私は別のプールのある施設に向かったので、その後どうなったかは分からない。もしも奇跡でも起こって、プールが正常に戻っていればそれはそれで良しとしよう。それでも、土日と二日続けて、あんな罰ゲームのような体験をさせられた私は、ほとぼりが冷めるまではスポーツセンターのプールには近づきたくはない。あんなに嫌っていた別の施設のプールに行こうと思えたのは、いつものプールの不具合のおかげである。それに、4月から水泳教室の初心者コースに申し込みをしたので、その事も大いに私の背中を押してくれた。泳げるようになりたいのはもちろん、それならプールの中ぐらいは歩けた方が良いに決まっているからだ。それなのに、今の私は1.2mの深さのプールの中をまともに歩けない。身体が水圧で動かず、どう頑張っても足が前に進まなくて、もがいているだけの体たらくだ。
今の私は、左足が思ったように良くならないどん詰まりの状況を何とかしたい一心で、1.2mの深さを何とか攻略しようと奮闘しているところだ。挑戦2日目にしてわかったことは、私の足が以前よりは確実に良くなっていると言う嬉しい事実だった。ノロノロと水の中を歩くこと30分、それが限界でやめておくのだが、信じられないほど、以前よりはダメージがない。以前の私は、15分歩くだけでも疲労困憊して、すぐには更衣室に行けなくて、プールサイドにあるベンチで少しの間休んでいた。それからすると、今は夢のようだ。とても信じられない。いつものプールは水深1.05mで足への負荷がたいしてないのは当たり前だが、1.2mはそれと比べると、別次元で運動量もすごい。それなのに、足の痛みが増すこともなく、家に帰るのに全く問題がない。これは一体どうしたことか。もしもいつものプールのトラブルがなければ、分からなかったことで、これこそ不幸中の幸いとしか思えない。突然のアクシデントに見舞われて、落ち込んでいたが、そこで逆転の発想ができたことに我ながらびっくりしている。
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