
あの人の水着がいつもと違った
昨日、プールに行ったら、いつものあの人がいないことにすぐに気が付いた。プールサイドで、監視員さんの営業開始の笛を待っていたら、幼児用プールの脇に座って待っているはずの”あの人”がいない。あれ、どうしたのだろうと訝しく思っているうちに、ピッと笛が鳴ってしまった。毎日きちんと来ている人なのに、今日は何か用事でもあったのだろうくらいに受け取っていた。すると、5分も経たないうちに、それらしき人が現れて、幼児用プールに歩いて行った。それらしき人と表現したのは、その人が身に着けているスイミングキャップも水着もいつもと違っていたからだ。
”あの人”と言うのは、私と同様に毎日プールに来ている男性で、白いスイミングキャップと黒地に白い模様が付いている水着を履いていた。それがあの人のトレードマークで、あの人はプールにいる間はゴーグルをはずそうとしないので、どんなお顔なのかはわからない。それでも、その人の歩き方や所作を毎日見ていると自ずと判断で来てしまうのだ。それで、昨日も正体不明の男性があの人であることに間違いないと判断できてしまった。どうやら、あの人は帽子と水着を新調したらしく、今度は紺の帽子と紺地に模様がある水着に変わっていた。一瞬、別人かとも思ったが、あの人の行動パターンはいつもと同じだった。
顔なじみのセツコさんによると、あの人は腰が悪いらしく、最初から幼児用プールで足をバタバタやっている。腰に負担がかからないので、最高のリハビリになるようだ。プールの端っこでバタバタやった後、次は反対側に移動してバタバタを25分程度やると、今度は私たちがいる大人用プールにやってくる。そこで10分ほど泳いだ後プールから上がるのがあの人の習慣だった。そうやって毎日あの人のことを見ていたら、思わず変なことを考えてしまっていた。変なことと言うのは、水着のことで、あの人の水着は黒地に白い模様と決まっていて、違うものに取り換えたことを見たことがなかった。もしかしたら、同じ水着を2個持っていて、とっかえひっかえしているのかとも想像したが、同じ水着を2枚も買う人はまずいないだろう。
考えてみると、私が初めて、プールに来たのが忘れもしない5月13日で、その時すでにあの人はいつものあの水着を着ていたと思われる。そうなると、今は年が明けてもう1月の下旬に差し掛かろうとしていて、あれからもう8カ月にもなる。余計なお世話だろうが、私が勝手に想像したのは、さぞかし水着は劣化して、ボロボロになっているのではないかと言うことだった。もちろん、傍目にはそんなことは微塵も感じさせないのだが、私の好奇心は留まることを知らなかった。
毎日プールに来ている私は、知らず知らずのうちに毎日来ている人はあの人と私くらいなのだと事実を自ずと知ってしまった。だからこそ、あの人が気になって仕方がない。私の顔なじみの人たちは週に2、3回とか、平日だけとかといった節度ある行動をとっているが、私ときたら、焦っているものだから節操がない。すべてのことは、”過ぎたるは及ばざるがごとし”と重々わかっているが、どうしてもやめられない。毎日少しずつでもやれば、努力が報われるという定説にすがっているのである。ところが、現実は私の悪あがきをあざ笑うかのように、さっぱり効果がない。思うようには足の痛みは消えてはくれない。
「あの人の水着がついに変ったわよ」などと、人に言ったとしても、相手にもされないことはわかっているので、わざわざ言及することはとてもできない。「この人、変な人」と思われるのが関の山だろう。それで、そんなときはひとつブログにでも書いて、自分の中で昇華し、綺麗さっぱり忘れようとした次第である。
mikonacolon