人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

胃カメラの本当の実態は

訳わからないうちに、済んでいるのではない?

 2週間のヨーロッパの旅から帰って、1カ月以上が経った。旅行中も、日本に帰ってきてからも、ずうっと胃がおかしいままだった。このまま放って置いたら、また風邪を引いてしまうし、何よりまともに食べ物が食べられないのが辛かった。それで、以前受診したことのある病院に行ったら、予想通り胃カメラをすることになった。胃カメラと言えば、普段から会社の同僚や周りからいろいろな噂を聞いていた。なので、漠然とした恐怖心があった。できればやりたくない。だが、先生は「今年はもう明日しかあいていない」などと信じられないことを言って、私を急かした。となると、これはもう考えるまでもない、やるしかないでしょう、だった。胃カメラの日程がずうっと先なら、いろいろ悩む暇もあっただろうが、何のことはない翌日なのだから”万事休す”だ。覚悟を決める。先生に「うちのは眠っている間に終わってしまうから、大丈夫」と太鼓判を押されても、本当かなあ、と心配になった。

 さて、当日病院に行くと、処置室で真っ先に肩に検査をスムーズに終わらせるための注射を打たれる。その後、処置室の奥の部屋に行き、これからする検査の説明を受ける。また左手の静脈に胃の動きを止める注射を打たれる。次は口の中に苦い液をスプレーされる。これはいわゆる麻酔薬で、10秒ほどは溜めて置いて、すぐには飲み込まないように言われる。薬の液を飲み込んだ後、ベッドに仰向けに横になると、つけていたマスクを外され、マウスピースを付けられる。「では、横向きになりましょう」と看護師さんに言われて、身体の向きを変えた。と、そこまでは覚えているが、それから先の記憶が全くない。

 目が覚めると、先ほどとは違って、薄暗い部屋の中にいた。どんな夢だったか思い出せないが、何か夢を見ていて、それが突然中断されて、目が覚めたような感覚だった。身体は横向きのままで、少し離れたところにはカーテン越しにベッドが見えた。すると、そこへひとりの男性がよろよろと歩いてきた。おそらく看護師さんだろうか、「大丈夫ですか、気を付けてくださいね」という声が聞える。その男性はベッドに横になると、すぐにゴオ~ゴオ~というイビキをかき始めた。見事に熟睡していた。その様子を見ていた私は半場呆れ、いったい何ごとかと仰天させられてしまった。

 それからまだある。その男性が寝ているベッドのすぐ側では、胃カメラの検査の真最中のようだった。先生が、「○○さん、これから口の中に管を入れますね」と声をかけ、「食道の狭い所を通るので、少し苦しいかもしれませんが少し我慢してください」などと気を配っている。検査が済むと、「はい、これで終わりです。お疲れさまでした」と患者さんに声をかける。一体全体、どうなっているのだろう、胃カメラをする人は皆意識があるのだろうか。でも、私は何も覚えていないし、訳がわからないうちに事が終わっていたのに。ベッドから起き上がってぼうっとしていると、看護師さんがやってきて、「もう検査は終わりましたよ」と声をかけてくれる。気が付くと、私の顔には外したはずのマスクがちゃんと付けられていた!ここまで気が付くとは!凄いの一言に尽きる。

 不思議に思って、胃カメラを何回も経験済みの同僚の男性に聞いてみた。すると、驚いたことには、検査の時にはしっかりと意識はあるのだと宣った。眠るのはあくまでも検査が終わってからであって、検査中は自分が何をされているかしっかりわかっているのだと言われた。まあ、考えてみると、先生も意識がない患者さんにいちいち声をかけて作業するなんてことはしないだろう。となると、私はいったい、どんなふうだったのだろう。いや、そんなことは想像しない方が良いに決まっている。それに、「胃カメラの検査の最中に眠ってしまうなんて、聞いたことがない」という同僚の言葉も気にかかる。

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