人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ドラマ「silent」

ただの恋愛ドラマと思いきや、なんだか違う雰囲気が

 川口春奈さんと目黒連さん主演のフジテレビのドラマ「silent」を毎週見ている。そもそもこのドラマを見ようと思ったのは、脚本がコンテストで入賞した若い人の手によるものだと知ったからだ。プロの脚本家ではなく、まだヒヨコの、でも将来有望で、既成概念に縛られない自由で新しい感覚を持った人が紡ぐストーリーなら期待できるのではと感じたからだ。コンテストで注目されるということは、ありきたりの平凡な内容ではあるはずもなく、何かキラッと光るものがなくては、到底無理だ。まずはお手並み拝見とばかりに第一回目を録画予約して、見始めた。

 想(そう)と紬(つむぎ)の高校生のカップルが、男の子の方の一方的な「好きな人ができたから」のメールで別れることになる。そして8年の月日が経って、偶然に再会したら、何とその相手は聴力を完全に失っていた。紬は想が耳が聞こえないことにショック受け、と同時に高校時代の楽しかった思い出が蘇ってくる。想をどんなに好きだったか、特にあの声が大好きだったと、当時の熱い思いが胸に込みあげてきて涙が止まらない。8年もの長い歳月が経ったのに、あれは昔のことだからと割り切ることができない紬は手話教室に通ってまでして、想とコミュニケーションを取ろうとする。

 ここで問題なのは手話教室に行きなよと勧めたのが紬の彼氏のミナトだということだ。見るからにどう見ても、至れり尽くせりの彼氏で、こんな人いるわけがない!?と思わず叫んでしまった。理解のある彼氏を演じてはいるが、実は心の中では暗い感情が渦巻いているのではないかとついつい疑ってしまった。紬も想とは友だちでいたいだけで、私たちの関係は何も変わらないと周りに断言した。そんな訳がないと興味津々の私は物語の展開が知りたくて、録画を毎週予約にしてしまった。どこにでもある三角関係、だが相手が聴覚障害者という点において状況は全く違う。このドラマのテーマは音のない世界に生きる人との恋愛は成立するのか、いやそれよりもお互いに分かり合えるのかということだ。

 言葉という音がない世界で、手話だけで自分の言いたいことを、思いを伝えられるのか。果たして相手と心を通わせることができるものなのだろうか。そんな疑問で頭がいっぱいになっていたら、ある事件が起こった。それはミナトが紬に「別れてくれない」と言いだしたことだ。紬は別れたくないと言い張るが、ミナトは「俺がもう無理だから。紬は良くても俺はダメなんだ」と譲らない。彼が言うには、これ以上一緒に居るとすごく嫌な奴になって紬に嫌われてしまう。嫌われたくないから別れたいのだ。要するにいい人でいるのに疲れたというわけだ。

 ここまでは何かのドラマでよくある場面だが、そこからが他のドラマと一線を画していた。何かというと、スマホの通話で、紬が口調は穏やかで、何でもない話をするのかと思ったら、ミナトに対する正直な気持ちを告白しだしたのだ。紬がミナトと別れたくないのは、コージーコーナー、つまり居心地が良い場所を失いたくないからだった。ミナトは自分にとって、彼氏というより弟、というより家族みたいなものでミナトと居るとラクだった。緊張感のカケラもなく、綺麗でいなきゃという努力も必要なかった。いつもミナトの隣でぐうたらして居られたから、いざその止まり木みたいな存在が無くなるのは嫌だった。

 告白の途中だが、私は椅子から転げ落ちるような衝撃を受けた。互いに泊まりあう関係なのに、なんだって?彼氏は男ではなくて、弟、いや家族ともいうべき存在でダラダラしていられるひだまりみたいなもの!?さらに、「ミナトって自分でも思ってるようにつまんない奴で、面白くもない、それに音楽の趣味が合わなくて、私の好きな曲は何を聞いても”いいね”しか言わない」と相手をけなしているが、本心はそれでも好きだったと言いたかったのか。あるいは、自分にとって居心地がいい相手だったから、だからこそ好きだったのか。いずれにせよ、わたしの中では「居心地よかったよ」というフレーズが印象に残った。

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