人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

やはり航空券かなぁ

今週のお題「自分に贈りたいもの」

f:id:mikonacolon:20220209214940j:plain

ホテル予約サイトからメールで旅へのお誘いが

 今の自分に贈りたいものといったら、やはり今の閉そく感をパアッと吹き飛ばしてくれるような体験しかない。それは物理的移動で、旅行、それも長い距離を移動する旅を指す。贅沢を言えば、移動手段は列車ではなくて、空中に舞い上がる飛行機ならなおいい。いや、どうしても離陸しかないとさえ思う。日常生活で背負った重荷を地上に置いてきて、忘れかのようなふりをして出発するイメージだ。ひとたび機上の人になってしまえば、そこは誰にも邪魔されない自分だけの空間になる。いくら狭くても気にならない、それどころか解放された気分になれる不思議な特等席と言える。もちろん隣には人がいるが、その人も自分の世界に入り込んでいるので、私のことなど気にならない様子。だからこそ安心できて、私も自分の時間にどっぷりと浸かることができる。目の前にある液晶画面に集中し、ただひたすら映画を見ていると、地上では感じたことのない想いが沸き上がってくる。ゆったりした自由な時間を過ごしている自分は今まさに”至福の時”なのだなあと痛感したものだ。

 だが、コロナ禍にあってはそんな望みは夢のまた夢でしかない。今の状況ではあまりにも非現実的すぎるので口に出すのは躊躇してしまう。なのに、こんなことをなぜ書いてしまうのかと言うと、メールソフトを開くたびに、以前利用していた某有名宿泊サイトから頻繁にお誘いのメールが送られてくるからだ。海外旅行はもちろん無理だが、それなら国内旅行はどうですか?と委縮してしまった私の旅心をやたらとくすぐってくる。ある時は静岡、この間は箱根の温泉とかどうですか?とこれでもかと宣伝に余念がない。先日も「あなたは当サイトのレベル3の会員なので今なら宿泊料金が15%になります」と親切心からなのか、余計なおせっかいなのか、どちらともつかないがお得な情報を教えてくれる。

 そうなると、こちらはコロナ禍なんて関係なく旅行する人も大勢いるのかと錯覚してしまいそうになる。でも気持ちが少しだけ動いたとしても、身体の方はすぐに動くはずもない。現実にはオミクロン株が猛威を振るっているのだから傍観するしかない。ワクチンを2回接種しているからと言って、感染しないという保証は何ひとつないのだから。ワクチンと言えば、田舎に住む義姉のミチコさんにも少し心境の変化があったようだ。ミチコさんはコロナ禍になっても、ほぼそれまでと変わりない生活をしていた。友だちとの外食もバス旅行も普通に行って、ひとりと犬1匹、猫2匹との生活を楽しんでいた。世の中がコロナ、コロナで騒いでいても、「こんな田舎だから気にすることもない」と楽観していたのだ。

 ミチコさんの周りもそれほど敏感に反応する人もいなかったし、私もあそこは別空間なのだと感じていた。ミチコさんはワクチンは打たない派なのにも関わらず、行動範囲は広く自由気儘に暮らしていた。でも最近のオミクロン株の凄まじい感染力には驚きを隠せないようだ。ミチコさんの家には旅行会社からしょっちゅうバス旅行のパンフレットが届く。最近気が付いたのは、必ず「ワクチン2回接種済みの方に限る」との申し込みに関しての条件が付くこと。「それならそれで私はいいんだけどさぁ」と何でもない 素振りをする。でも内心では心は揺れているようで、病院に電話したら、「今回は3回目の人だけなので、1回目の人はできません」と言われてしまった。

 あんなにワクチンは打たないと固く心に決めていたミチコさんも動揺しているようだ。たぶん、ワクチンを打ちさえすれば、旅行に行けるのなら、それなら打ってもいいかなあという方に気持ちが傾いているのだと思う。このままでは友達と付き合うこともできないので”人生は楽しめない”と考えたのかもしれない。いずれにせよ、私が一番驚いたのは、堺市にあるミュシャ美術館へ行く話をした時のミチコさんの反応だった。「もう今回は行くのやめとこうと思う」「どうして?オミクロン株のことが心配だから?」「うん、あまりにも感染者が多いから怖くて!」「行くのは3月の終りだからその頃は下火になっているって話だよ」

 電話でこんなやり取りをしたのだが、内心で明らかなミチコさんの心の変化を感じ取って仰天した。人の心は鏡のようで、繊細で、いつも揺れ動いているものなのだが、あの頑固なミチコさんの心もついに揺らいできたのだった。

mikonacolon