人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

人並みの記憶力

今週のお題「自分に贈りたいもの」

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もっと記憶力があったら、別の世界が見られるのに

 自慢にもならないが、私は記憶力がほぼないに等しい。これは歳のせいではなくて、若い頃からないのだからどうしようもない。最近記憶力がなくなって困ると言う友達は、「若い頃はテストのための暗記なんてすぐにできたのにねえ」と嘆く。でも私は昔も今もたいして変わらないので、同意するわけにもいかないので黙っているしかない。皆そんなに若い時は頭が働くものなのかと内心びっくりするしかない。よく聞いてみると、テストの時の一夜漬けなど朝飯前だったらしい。つまり、テストが終わった途端、きれいさっぱり忘れていいのよ、と言うことだ。

 そんな記憶力がゼロの私も海外旅行の時だけは自分なりに頑張ろうとした。言葉が話せないと、どうしようもないことは容易に想像できた。言葉なんて話せなくても大丈夫、ジェスチャーで何とかなると言うのは楽天的すぎる。でも、たまにはそんな人もいた。ローマのパン屋の店先で出会った中年の女性は店員さんに日本語で堂々と話しかけていた。もちろん相手はイタリア語なのだが、その人の笑顔があまりにも見事なので何の支障もなくコミュニケーションが取れていた。このおばさん、凄い!と心の中で拍手した。私はと言うと、覚えたてのイタリア語を無理やり使って何とかパンを買おうとしていた。お決まりのフレーズを繰り返すのだが、笑顔を作る余裕などなくて冷や汗をかく。それもそのはずでこの時が初めての海外旅行なのだから仕方がない。

 学生時代と違って、必要に迫られてやる語学学習ほど”燃える”ものはないと思う。”燃える”と言うのは、やる気の炎がメラメラと燃え上がることだ。その炎の中にいる自分はけっこう浮き浮きして高揚した気分になっている。必要に迫られる状態と言うのは私の場合、6カ月先に飛ぶ予定があることだ。予定というのはもう飛行機を予約していてe-チケットも入手済みであとは空港に行くだけの状況を意味する。要するに生来ナマケモノの私はそんな状況を敢えて作らない限り頑張ろうとしない人間なのだ。たしか、新聞の新刊書の広告で見たことがあるが、『どうしても頑張れない人たち』というタイトルの本があった。副題は「世の中には残念なことに普通の人たちのように頑張れない人達がいる」だった。それを見てふと思った、これって私のことだ!と。

 以前私が楽しみにしていたのはNHKラジオのビジネス英語で講師は杉田敏先生だった。ビジネス英語と言うと、難しい専門用語がやたら出てきて、普通の人が聞いても面白くない。でも先生の番組はそんな常識を覆した毎回斬新な内容で、従来の講座とは一線を画していた。日本の大学を卒業したばかりのひとりの男性がニューヨークの支社に赴任するところから物語は始まる。彼が外資系の食品会社で同僚とスモールトーク(世間話)をしながらストーリーが展開し、毎回テーマが決められていた。最近よく使われているsastinability (持続可能なこと)という単語もすでにこの講座で聞いて知っていた。毎月18日のテキスト発売日が来るのが楽しみだった。今月はいったいどんなテーマなのかと期待に胸を膨らませていた。

 ある時、先生は番組の中で自分の英語学習法についての話をされた。そのときに「僕は中学生の頃から記憶力だけは良くて、英語の単語なんかはすぐに暗記できたので苦労したことはないんですよ」と言われたのには「なるほど!」と納得した。先生ほどの人になると、下地と言うか生まれながらに持っている能力からして違うのか。たぶん覚える能力だけでなく、忘れない方の能力も持ち合わせておられるのだと想像するに難くない。一方、凡人である私はすぐに忘れてしまうのに、それでも無理矢理覚えようとする。”ゼロよりも1の方がまし”でしょうと悪態をつきながらも、やるしかないからとにかくやる。そうすると、現地に行って”やっててよかった!と感激することもある。頭をかすめたはずの一部のフレーズがその時とばかりに頭の中に浮かび上がってきた。

 だが、本当いうと、どう考えても効率が悪すぎる。今の言葉でいうならコスパが悪すぎるのだ。だからせめて人並みの記憶力を自分に贈りたいと思ってしまう。

mikonacolon