人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

4年ぶりのクルーズ旅行

心底楽しめなかったのは、なぜなのか

 新聞の投稿欄に、『クルーズ旅行 なぜか心が・・・』というタイトルを見つけた。クルーズ旅行か、いいなあ、楽しそうでと、他人事だからと軽く思ったが、なんとあのダイヤモンド・プリンセス号だと知って、複雑な気持ちになった。当時北海道で新型コロナの感染者が急増しているというニュースは聞いていたが、すべてはあのクルーズ船から始まったと言っても、過言ではないからだ。あの船で災難に巻き込まれた人は、「もう二度とクルーズ船には乗りたくない。もう乗りません」とインタビューに答えていた。密閉空間がどんなに恐ろしいかを身をもって体験したがゆえの感想だから説得力があった。

 私の偏見かもしれないが、女性は、特に中高年以上の女性はクルーズ船が大好きだ。どこかがいいのかと尋ねると、まずは移動が無いのがいいのだそうだ。普通のツアーだと、当然バスや電車で、主にバスで移動する必要がある、それに見学場所まで自分の足で歩く必要がある。それが面倒で、できれば極力歩きたくないらしい。その気持ちが私にはさっぱりわからない。自分がいる周りの景色が変わるから楽しいのに、同じ場所にずうっと留まっていたいだなんて、同じ人間の発想とは思えない。ともかく、一度乗船してしまえば、何もかもそこで済ませることができる。毎日日替わりのショーを楽しみ、食事も申し分がないので、退屈とは無縁だと言う。

 もっともこの話は義姉のミチコさんが豪華客船の飛鳥に乗ったときの感想で、他の皆さんの意見は残念ながらわからない。ただ、たまに法事などで、親戚の中年女性同士が寄り集まっておしゃべりをすると、必ずクルーズ船の話を耳にすることが多い。つまり、もう子供も独立し、夫婦二人になったので、あとは楽しみたい。飛鳥にでも乗ってみたい、となって、それくらいの贅沢はしても罰は当たらないだろうと皆言うのだ。ちなみにミチコさんが最高の体験だったと感激した、飛鳥の料金は7日間ほどで35万円だが、これは一番安い料金だそうだ。私から見れば、船に1週間閉じ込められ、盛りだくさんのショーを見せられて、それでこの値段は、なんだか高すぎるなあと感じてしまう。だが、ミチコさんはそれだけの価値があると納得しているようなのだ。要するに、ツアーのようにあちこち連れまわされ、歩かされることがないから、楽ちんなのだ。楽して、美味しい物を食べられて、おまけに娯楽があるから退屈とは無縁、だから、クルーズは人気があるし、皆の憧れだ。

 さて、新聞の投稿者の話に戻ろう。この人も中高年の女性だが、4年ぶりに夫婦で参加して気づかされたことがあったと書いている。それは楽しいはずのクルーズが、心底から楽しめなくて、自分でもそれがどうしてなのか分からないと戸惑っていることだ。このご夫婦は、クルーズのために普段から万全の準備をしていた。『英会話やズンバダンスのユーチューブを見て練習に励んでいた』し、『ブログなどで船内の様子も学習し、体調も整え』て、万全の体制で臨んだにも関わらず、いまひとつで、以前のような充実感がなかった。ではいったい何が問題だったのか。船内は和気あいあいで、以前と何も変わらなかったし、毎夜開催される素晴らしいショーや食事は以前より質が上がったと感じた。それなのに、自分はどこか冷めていて、楽しめていなかった。

 やはり、4年の歳月を一瞬にして埋めることは難しいのか、それとも今の自分は以前とは全くの別人になってしまったのか。投稿文の最後で、『久しぶりに旅行に出かけて私と同じように感じている人はいるだろうか』と綴っていた。この問いかけに対して、どなたか意見を寄せてくれる方がいたらいいなあと思う。事実、そんなことが新聞の投稿欄ではよく起きているから。共感や反論など個人の様々な意見を垣間見ることができる貴重なページだと日々実感している。

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