人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ホテル、フロル・リヴォリ

最高のロケーションに文句なし

 翌朝朝食を終えると、パリ第一日目のホテル・マリアンヌでの水漏れとの闘いに別れを告げて、私は二日目に予約したホテルに向かった。念のために言っておくが、水回りのトラブルは滅多に起こることではなく、それがたまたまパリの老朽ホテルだっただけのことだ。こればっかりは泊まって見なければわからないことで、運が悪いと思うしかない。なので、もうマリアンヌのことは忘れることにする。

 ホテルのあるジャコブ通りを左に曲がり、セーヌ河畔へと向かう。5分もしないうちにセーヌ川が見えてきて、コンティ通りに突き当たる。右の方向へと歩いて行くと、ポン・ヌフ橋が見えたので、渡ってまっすぐ行くと事前に調べて置いた通りに、ユニクロの看板があった。そう、次のホテルに行くための目印は日本でお馴染みのユニクロの店舗だった。あらかじめ、Googleの航空写真で見て置いたが、ユニクロの店舗は上から見ると白い建物なので、とても目立っていてわかりやすかった。だが、現地に行ってみると、そんな気配は全くなく、白地に赤い文字の「ユニクロ」の看板だけが頼りだった。ユニクロはポン・ヌフ通りとリヴォリ通りの交差点の角にあったが、異邦人の私にはそんなことは全く分からなかった。

 とにかく、ホテルはユニクロの近くにあるぐらいにしか思っていなかったので、すぐに見つかるわけもない。誰かに聞く必要があった。さて、誰に聞いたらいいのだろう。こんな時頼りになるのは、お店の人か、あるいは、何らかの制服を着て歩いているような人に限られる。ユニクロを通りすぎて、少し行くと、ポール何とかというブテックがあって入口に警備員の男性がいるのを見つけた。それで中に入り彼に尋ねた、「”ダーシュカ”はどこですか」と。ダーシュカは航空写真に載っていた店舗で、探しているホテルのすぐ近くにあった。すると、彼は少し笑って、フランス語で何かいい、すぐ隣を指さした。私が戸惑っていると、外に出て来て、隣の店舗にある頭上の看板を見てと言う。そこには、”ダーシュカ”と書いてあり、女性向けの洋服のブテックだった。なるほど、目の前しか見て歩いていない私には、あんな堂々とした看板を掲げているにもかかわらず、全く見えていなかったのだ。

 ダーシュカがわかると、それからはそれまで立ち込めていた霧があっという間に晴れたかのように、一気に視界が広がった。ダーシュカの脇にある路地に目をやると、そこには「フロル・リヴォリ」の文字が見えた。私のパリでの次の宿泊先のホテルだ。なぜここに泊まると決めたかと言うと、それは何と言ってもこれ以上ないロケーションだ。夢のような話だが、このホテルから10分ほどで、ルーブルに歩いて行ける。これまでのようにもうセーヌ川を渡り、とぼとぼ歩いてホテルに帰る必要がないのだ。こんな幸せがあるだろうか。それに、このホテルに2万円ほどで泊まれるのだから、とんでもなくリーズナブルだ。このお得感は半端ないと思う。今まで、こんな素晴らしい場所には高くて到底泊まれないと決めつけていたが、こんなホテルもあることを知った。

 もちろん、立地的には低料金なのだから、部屋はシンプルで、冷蔵庫はないし、ミネラルウオーターのサービスもない。湯沸かしポットもないし、コーヒーステックもないが、マグカップだけはひとつあった。だが、トイレやシャワールームの水漏れもないし、清潔で何の問題もなく、2日間を快適に過ごすことができた。宿泊代を節約するのには、もってこいのホテルだ。それと、特筆すべきはすぐ隣にFRANPRIXというスーパーがあって買い物に便利だし、ホテルの目の前には、地下鉄の入口があって至れり尽くせりの環境だった。頭の中で、後々の宿泊代の支払いの心配をするくらいなら、このようなタイプのホテルに泊まった方が安心できるのかもしれない。

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