人生は旅

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コロナ禍の短歌から

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ライオンが「禁足辛いか」と問う?

 朝日新聞に朝日歌壇の番外地と言うのが載っていて、なかなか面白い歌がありました。思わず笑ってしまうものや「う~ん、なるほど」と感心して、そのあと考えさせられてしまったり。その中でも、私が特に注目したのは中原千絵子さんの次の短歌です、

「5週間ぽっちの禁足辛いかね」

動物園のライオンが言う

 この歌を見て改めて思うのは、動物園で保護されている?動物は1年中、いいえ、一生外に出られないと言うことです。つまり、一生、禁足状態です。不自由であることは、動物園にいるのだから当然だとばかり思っていましたが、人間がいざそういう状態になると「ジタバタ」してしまいました。作者はきっと外出自粛になったとき、動物園にいる動物のことを思い、一番に頭に浮かんだのはライオンだった。百獣の王でプライドも高いだろうライオンさえも、禁足に耐えているのだ。そのライオンに人間は「何をやっているのだ」と叱られてしまいそうだ。たった2か月程度の禁足でブーブー文句を言っている人間を「弱っちい奴」と呆れかえっているのだった。

 この歌で詠まれている動物が、ゾウでもキリンでもシマウマでもなく、ライオンであることに意味があると実感しています。自分のことでいっぱいいっぱいで他の生き物のことなど思いやる余裕などありませんでした。そんな私にとってこの歌は衝撃でした。

動物園の一番人気はライオン?

 ライオンと聞いて、思いだすのはベルリン動物園で見た光景です。日本の動物園では一番人気はもちろんパンダです。でもその常識は日本でだけ通用するのであって、世界では違うのだとわかった経験でもありました。行く前にガイドブックを読んで、ベルリンの動物園の一番人気はライオンだと初めて知りました。でも、それと同時に「それって、本当なのだろうか?」と疑問を抱いたのも事実です。だからその真偽を自分の目で確かめるためにも行ってみました。

 ベルリン動物園に着くと、すぐにパンダを見に行きました。さぞかし人が大勢いると思ったのに人っ子一人いないので、思わずサインを確認したほどです。でも、確かにパンダ舎に間違いありません。目の前にはパンダがのんびりと寝っ転がっているのですから。しばらくの間、信じられない思いでパンダを見つめていたら、やっとお客さんがひとりやって来たので我に返りました。なぜこうもこっちの人はパンダに冷たいのか、できれば聞いてみたかった。でも当時はそんな考えは思いもよらなかったのです。

 次に行ったのはライオンの獣舎で、と言ってもあまりの人の多さに近づけませんでした。遠くから、ライオンが動き回る姿を人だかりの隙間からチラッと見た程度です。ベルリン動物園でのライオン人気は、「百聞は一見に如かず」で本当のことでした。それにしてもなぜライオンがこうも人気なのか、未だにわかりません。

 この歌に惹かれたのは「禁足」という言葉が出てくるのも一つの理由です。いつも中国ドラマを観ているので、しょっちゅう罰則としてこの言葉が出てきます。人間の自由を奪われるのは、人に痛みを与える杖刑(じょうけい)よりもつらく感じる場合だってあります。期限付きの禁足であれば、何とかその間を耐えればいいわけですが、それが一生となったときは、もう間違いなく普通の人間は絶望するはずです。

 以前読んだノンフィクションを元にした小説は英国の王室が舞台でした。新しく王位についた弟は自分の実の姉を脅威に感じ、修道院に監禁してしまうのです。姉が自分よりも頭脳明晰で人望もあることから、「もしかしたら王位を狙われるのでは」と考えて恐れたからです。でも姉は普通の人ではなかったので、すぐに自分の置かれた状況を運命だと割り切りました。なんと一生を自分のライフワークであるテーマの事典を編纂することに捧げたのですって!この事実から学ぶことがあるとすれば、いまの状況で可能な限り楽しめということです。そうやって、何とか自分の心に折り合いをつけるようにすれば、正気を失わずに済むと思うのです。

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