人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

冷たいお粥が美味しい?

今週のお題「冷やし◯◯」

ミルク粥がまさかの冷たいデザートに

 世の中には冷やした方がそのまま食べるよりもはるかに美味しくなるものがたくさんある。でもこれだけは「それはないでしょう、そんなことをしてどうするの?」と呆れる物もあるにはある。その筆頭にあげられるのがお粥で、あれは暖かいからこそ価値があるとずうっと思っていた。一昔前は中国粥というものが流行っていて、ヘルシーだからとか、胃に優しいからだとか言って、お粥を食べることをテレビ番組で勧めていた。でも私はお粥というものは具合が悪くて何も食べ物が喉を通らない時に食べる物だと決めつけていた。なので、どうしてそのままで十分美味しいご飯をわざわざお粥にしなければならないのか到底理解できなかった。普通の身体でも、あえてご飯よりもお粥を好んで食べることが信じられなかった。

 子供の頃、風邪を引いた時に必ず母がお粥を作ってくれたが、あれは確かにさっぱりして美味しかった。弱り切った身体には最高のご馳走だったが、元の身体に戻ったらもうお呼びではなかった。そんな私も、元気な身体でも美味しいと思えるお粥に出会ったことがある。それはロシアのモスクワに行った時、泊まったホテルの朝食に出たお粥。そのホテルはモスクワの中心から地下鉄で20分ほど行った場所にあって、中心部のホテルの3分の1ほどの値段で泊まれた。その頃はモスクワでまともなホテルに泊まろうと思ったら、一泊5~6万もした。朝食はホテル代に含まれていて、何が出るかは分からなかった。普通はパンとコーヒーぐらいなのに、その日は珍しいことにお粥が出た。お粥と言っても、ロシアのはカーシャと呼ばれる少し甘い味付けのお粥だった。そのほんのりとした甘みが何とも言えず美味だった。まさかこんなところでこんな美味しいものに出会えるとは予想もしなかった。本当は、ぜひお代わりをお願いしたかったが、その気持ちをグッと抑え込んで、食堂を後にした。なぜそうしなかったのかは、たぶん、余計なことを一切言わずに無難にやり過ごそうとしていたのだろう。おそらく、サービスで提供してくれている朝食なのだから、断られるに決まっていると勝手に解釈していたのだ。結局、そのホテルには4泊したのだが、期待したのにかかわらずお粥が出たのはその日だけだった。

 さて、冷たいお粥の話だが、そのお粥に出会ったのはベルリンで、ビオのスーパーでだった。その頃のベルリンは普通の商品よりも少し値段が高くても、オーガニックの物が人気があった。私にはそれほどこだわりはなかったが、実際買ってみるとなんだか、ビオの方がより美味しいように感じた。外国のスーパーに行かれた方ならわかると思うが、あちらは日本とは比較にならないほど乳製品の数が多く、売り場の面積も天文学的に広々としている。何でも好きな物を選びたい放題で、正直迷うほどなのだが、そこである気になるものを見つけた。

 それはカップに「○○RICE」と書かれたパッケージで、ライスと言うのだからお米かと一瞬思った。中にはいったい何が入っているのだろうと興味津々だった。となると、これは買うしかないと言うことで、迷わずかごに入れた。旅先で面白いもの、なんだかへんてこな物を見つけたら、それがたとえ失敗だろうと何でも試すことにしている。とにかく買って試してみて、その正体が何か確かめるのが楽しい。ヨーグルトと見間違えるほどのカップのシールを剥がすと、そこには白いつぶつぶが見えた。予想した通り、どう見ても中はお米で、食べて見ると味はミルク粥で少し甘い味がした。最初は信じられずに違和感を抱かずにはいられなかったが、いつの間にかなんだか変という感覚が消滅していた。信じがたいことだが、その味を受け入れて、「意外に美味しいではないか」と感じてしまう自分に我ながら驚いた。

 冷たいミルク粥に味を占めた私は、これなら続けて2個はイケルと思った。残念ながら、量が少なすぎて主食にはならず、あくまで食後のデザートでしかなかったが美味しい体験ができた。処変われば品変わると言うが、ベルリンではミルク粥は冷たいデザートとして売られていた。

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