人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ルドルフとイッパイアッテナ

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斉藤洋さんの「ルドルフとイッパイアッテナ」の表紙。残念なことに本屋で捜したのに見つかりませんでした。それで続編の「ルドルフともだちひとりだち」を買ったら表紙の裏にこの絵がありました。可愛い猫ではない、カッコイイ、いいえ、むしろ怖いくらいのネコの絵がとても印象的でした。

この本に登場するのは、まさかの教養のある猫で

 正直言って、以前本屋で「ルドルフとイッパイアッテナ」を見かけて手に取ったとき、表紙を見て衝撃を受けました。ネコなのに可愛いい絵ではなかったからです。子供向けなのに、可愛くもなく、楽しい話でもないのかなあと一瞬思ってしまったからです。考えてみれば、このシリーズは図書館でも順番待ちができるほど人気があるらしいのです。面白くない訳がありません。表紙のネコの絵は杉浦範茂さんが描いていて、見るからに迫力のある猫なのです。

 それからずうっと忘れていたのですが、新聞に載っていた斉藤洋さんの「人でない者たちとの会話」がきっかけでまたこの本と出会いました。柿の木やテーマパークの風車や動物園のレッサーパンダと会話できる斉藤さんの秘密を知りたかったからでした。信じられないことに人でない者たちは自然に向こうから話かけてくれるらしいのです。遠慮なく私たち人間たちの行動の矛盾を指摘してくるのだそうです。どうしたら人でない者たちに話しかけてもらえるのか、それを知りたくて本を読み始めま

 ページを開くと、これまでのあらすじが書いてあって、どうやらルドルフは岐阜から東京に引越してきて、イッパイアッテナと知り合ったようなのです。引っ越しと言っても、魚屋の店先に止めてあったトラックでヒッチハイクしてきました。それは偶然の出来事で優しい飼い主と別れることになってしまったのです。この本を読むまではネコが人間と同様にヒッチハイクできる生き物だとは考えもしませんでした。作者の斉藤さんは、ネコも勉強すれば教養が身に付くし、英語だってわかるようになるという発想でこの物語を展開していくのです。知りませんでした、ネコも人間の言葉がわかると勉強できるし、漢字だって読むことができるのだということを。

 何も考えていないように見える猫たちが小学校の教室に忍び込んで、授業を盗み聞きしているなんて、考えただけでワクワクしてきませんか。だから各地の地名や東名高速道路インターチェンジがどこにあるかなんてこともすべてお見通しなのです。ルドルフはどこにでもいる普通の黒ネコでしたが、イッパイアッテナに出会って教養のある猫を目指すことになりました。「今どきのネコは教養ぐらいないとだめだ」というイッパイアッテナの教えを忠実に守って努力するのでした。このシリーズの2冊目のお話はまた岐阜にヒッチハイクで戻るのですが、車のバックナンバーから行き先を推測して車を選ぶので難なく目的地に着くことができました。人間より頭を使っています。

 言ってみれば、ネコのロードムービーで、人間のようにネコが旅をすることが面白いのです。しかもお金は要らないし、できれば持ちたくない荷物もなくていいのです。何と言ってもネコは身一つで移動できるので羨ましい限りです。「ネコは自由でいいなあ」と思わず呟いてしまいます。教養を身につけた猫は人間の話もよく分かるし、普通のネコより世界が広がって楽しい、読者は子供でなくても大人でもそんな気持ちになってしまいます。「知識はネコを救う」などとはどこにも書いてありませんが、ネコが人間と同じように考えを巡らせることができるとしたら、これはもの凄い事ではありませんか。そんなありえない、夢の世界に連れて行ってくれるのが「ルドルフとイッパイアッテナ」なのです。何度読んでも面白いと思える、そんな貴重な本です。

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▲トラ猫のイッパイアッテナ。

 

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