人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

人の人生を左右する間取り

今週のお題「間取り」

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▲これは4月13日の朝日新聞に載っていた写真。真ん中に大きな穴の開いたビルを設計したのは、なんとシドニー在住の日本人の建築家。この穴が自然の風を通してくれるのでビル全体が冷却される、そのおかげで夏場でも、マンションでは年に4,5日しかエアコンがいらなそうです。究極の「脱炭素ビル」と言えます。

家の新築にワクワクして夢を見ていた子供の頃

 子供の頃は田舎で昔からの古い家に住んでいたのですが、ある時家を新築することになったのです。それは父がちょうど会社を定年になって、退職金が入ったので、そのタイミングで建て替えることになったわけです。小学生だった私は自分の部屋というものがなかったのですが、それが普通だと思っていました。家が狭いわけではないのですが、外国のテレビドラマに出て来るような「子供部屋」というものはありませんでした。末っ子だった私はずうっと両親と一緒の部屋で寝ていたからです。だからひとりになりたいとか思わなかったし、むしろ誰もいない部屋で自分ひとりで寝ることを考えると怖いと感じたものです。周りの友達も同様で、勉強部屋と称する部屋があっても、家族が集まる部屋で宿題などをしていたのです。まだ小学生に個室などは必要がないと考えられていた時代でした。高校生だった兄は2階建ての離れの部屋で大学受験のために勉強に励んでいました。

 ところが、小学校の高学年になると、父が「お前の部屋もちゃんとあるぞ」と新しい家の図面を見せてくれました。それは大きな薄い紫色の紙に青い線で書かれた家の設計図で、私の部屋は2階にあり、南向きの日当たりのいい角部屋でした。自分の部屋なんてどうでもいいと思っていたはずなのに、未来の自分の部屋の青写真を見せられるとワクワクしてしてしまったのです。新しい家が完成するまでの間は、2階建ての離れに移り住むことになりました。家が完成して自分の部屋に落ち着いた時、今まで考えもしなかった思いが頭に浮かんできました。誰にも邪魔されず、ひとりでいることは楽しいと感じたのです。今までは家の誰かといたから安心できていて、ひとりでいることに慣れていなかったはずでした。それなのに今では抵抗なくひとりを受け入れているのでした。今にして思えば、明らかに家の間取りが私を変えてくれたのです。それともちょうど自分自身が変わる年齢と家の新築が重なっただけなのか。

 人の人生を変える間取りというと、以前テレビでやっていたリフォームの番組を思い出します。「劇的、ビフォアアフター」という家の不便さに悩まされている家族にとって救世主のような番組でした。その中で私が一番印象に残っているのは、薪ストーブを囲んで一家が団らんする家でした。冬を過ごすにはあまりにも厳しい環境なのでしょう、薪ストーブの隣にはベッドの上に座っていつもニコニコしているお祖母ちゃんの顔がありました。そこに家族が集まってくるのは家で唯一暖かい場所だからでした。その家の人達はここで食事もするし、子供たちは宿題もするので家族の断絶など無縁の家でした。その家のお祖母ちゃんは家族と毎日のように顔を合わせ、家族の話す声や笑い声を聞いて幸せに暮らしていたのです。でも家族にとっては不便で仕方ないので、もっと快適な家が欲しいと思っていたのです。それで番組に依頼して、その結果「今までは何だったの?」と思うくらい便利な家になりました。リフォームで幸せになって貰うのが番組の目的で、お祖母ちゃんはというと、清潔で快適な個室を作ってもらいました。でもその部屋は台所の奥にあり、ナレーションで「食事の時はお祖母ちゃんも家族の姿を見ることができます」と言っていたものの、いつでも家族を感じられた以前とは雲泥の差なのでした。家族それぞれ快適な個室があるので、自然とお祖母ちゃんは世話をしてくれる娘さん以外の家族とは疎遠になってしまうのでした。

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