人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

イタリアの絵本の梨園の娘

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梨園の娘をかごの中に忍ばせて

  久しぶりに行った大型書店の絵本コーナーでイタリアの絵本を読みました。洋梨で有名な地方が舞台になっていて、毎年収穫の時期には王様に梨を大量に納めなければならないのです。ところが、荒れた気候のせいか凶作でその年はかごに3つ半しか梨が取れなかったのです。困った農園主は自分の一番末の娘をかごに忍ばせて王宮にもっていきました。食糧庫で娘はお腹が空くと梨を食べ始めたので、すぐに家来に見つかってしまうのです。それで小間使いとして王宮で働くことになるのですが、この娘が賢くてとても役に立つのでたいそう喜ばれたのです。いつしか王子と仲良くなってしまい、それをよく思わない王様が娘を追い出そうとします。

 娘が邪魔な王様はどこにあるかもわからない、梨園にあるという宝箱を持ってこなければ王宮には戻って来るなと言うのです。理不尽なことを言われた娘は絶望に打ちひしがれますが、そこは梨園の娘なので妖精が味方してくれるのです。このお話での心強い味方は梨園に昔から住みついている伝説の魔女でした。まるでシンデレラが舞踏会に行くのを手助けするように、宝箱への進むべき道を示し、必要なアイテムまで用意してくれるのです。ここではわらのほうきと褒めちぎる言葉とたっぷりの生肉、そしてラードです。

待ち受ける障害物が義理堅くて面白い

 一番最初に出会ったのは、かまどを炊く女たちで仕事に一生懸命で娘の話を聞こうともしません。なかなか道を通してくれそうもないので、持っていた袋からほうきを取り出すと大喜びでした。なんと自分たちの髪の毛を抜いて掃除をしていた?のでほうきに夢中です。その隙に通り抜けて進んでいくと、次は恐ろしい血の川が流れていてぞっとしました。それでも娘は勇気を出して「なんて、美しい川なのかしら、こんなきれいな赤は見たことないわ」と褒めちぎったのです。魔女に教えてもらった通り実行したら、不思議なことに通り抜けられました。その後も獰猛な狼たちには生肉を与え、宝箱がある宮殿のもう何年も開けられたことのない錆びた扉にはラードが役に立ちました。

 宝箱を手に入れた娘が来た道を帰ろうとすると、宝箱が「この娘を通すな、邪魔をしろ」と命令してくるのです。娘に意地悪をしようとするのですが、何年振りかに開いた扉も、狼たちも血の川もかまどの女たちもみんな義理堅いのです。娘に恩を感じていて宝箱の言うことなどに耳を貸さないのです。この本の絵を描いている酒井駒子さんは「意地悪なのに義理堅い者たちが登場することが可笑しくもあるし、興味深い」と感想をあとがきに書いています。

最後は娘は王子と幸せに

 魔女の助言のおかげで無事王宮に戻った娘は、宝箱を王様に差し出すと何事もなかったかのように歓迎されました。財宝に目が眩んだのか、それとも娘を認めたのか、王様は娘が王宮に留まることを許してくれました。何でも望みをかなえると言われると、地下にある古い箱が欲しいとお願いしました。その箱を開けると、なんとその中から王子が飛び出してきてびっくりです。王子の計画でした。それでこの絵本の物語はめでたしめでたしで終わりです。絵本を読み始めると、すぐに梨園の娘の運命が気になって仕方ありませんでした。娘が賢いのは生きる上で必要なことですが、それだけでは十分でないことは明らかでした。梨園の娘という運命からか、魔女の助けは不可欠で、義理堅い者たちも登場させて物語に彩りを与えてくれました。

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