人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

お気に入りの靴下を見つけた店

今週のお題「お気に入りの靴下」

f:id:mikonacolon:20211119211804j:plain

コート・ダジュールの東端にあるマントン。美しい旧市街とレモンで有名な町。NHKまいにちフランス語テキストから。

携帯を忘れたおかげで、偶然に靴下と出会う

 あれはまだコロナが流行る前の年末でした。私は実家に行くため電車に乗ろうと家を出ました。駅に着いて電車に乗りこんで、しばらくしたら携帯を忘れたことに気づきました。でもその時は「家電に電話すればいいだけのこと」とたいして気にもしませんでした。在来線を乗り継いで、新幹線に乗ったとき、カード電話を見つけました。そうだ、今から電話しておけば問題ないのだと思い、テレホンカードを購入して実家に電話したのです。ところが、何度電話しても家人は出ないのでした。後になって考えてみると、相手の携帯番号に電話すれば何の問題もないのですが、こんな事態を想定できないので、電話番号を覚えていないのでした。思慮深い人なら、もしもの時を考えて番号をメモっておくのですが、なにしろ浅薄な私のことですからそんな考えは思いもよりません。

 私が電話が繋がらなくて、右往左往している時、相手もまた、あれやこれやと想像して気を揉んでいたのでした。家に居るものだとばかり決めつけていた相手は、車で買い物に行ったりして用事を済ませ、その途中で私と合流しようとしていたのです。携帯があればどこに居ても相手と連絡が取れるのですから、そんなことは誰もが当たり前にすることです。とにかく私が携帯を忘れたのと、あまりの想像力のなさがこの時のトラブルの原因でした。電話が繋がらないまま、約束の時間があっという間に過ぎて、どんどん辺りは暗くなっていきます。待ち合わせ場所は私鉄と国鉄がある地方の駅ビルで、そこはショッピングモールになっていたのですが、いつもは素通りするだけで立ち寄ることはありませんでした。

 どうしようもなくやきもきしていた私ですが、ふと自分が空腹なのに気づきました。それで、もう心配しても埒が明かないから、相手が家に帰って来るまで何か食べて待とうという気持ちになったのです。こういう場合、相手も諦めて自分が電話してくるのを家で待っているに違いありません。何回も来ているのに、この時初めて中がどんな風になっているのか、どんな店があるのかを知ることができたのでした。ロッテリアスターバックスドトールなど気軽に入れる店が並んでいて、またこの地域で人気のある惣菜屋もありました。もちろん三省堂書店もあって、なかなか楽しい所だと思ったら、今自分の置かれている状況を一時忘れていたのです。総菜屋はイートインのスペースもあったので、ここで夕食を食べることにしました。空腹が解消されると、なんだか沈んでいた気持ちがふっと軽くなった気がしました。

 店から出たら、目の前の店のウインドウには靴下がずらりと並んでいるではありませんか。赤、黒、茶色、様々な彩や模様の靴下が整然と飾ってあるのには思わず見とれてしまいました。下に置くのではなくて、壁に飾るようにしてあるのは、靴下の見せ方としては最高のパフォーマンスで、とても面白いと思いました。それらはすべて福助の靴下のようで、買った時に入れてもらった袋にはFUKUSUKEの文字が書いてありました。

 きっとその時は私にとっては不幸中の幸いで、自分がよさそうだと思って買った3足の靴下はすべて当たりでした。その靴下は同じデザインで色違いの物でしたが、残念ながら散々穿き尽くしたせいで、穴ぼこだらけになったので引退してしまいました。それらの靴下の何が気に入ったのか、素晴らしいのかというと、普通の靴下に比べて丈が長めなこと、暖かいこと、何回洗っても毛玉にならないことなどがあげられます。はっきり言って、世の中に暖かい靴下はたくさんあると思うのですが、すぐに鬱陶しい毛玉が付いてしまうのが悩みなのです。そんな悩みから私を解放してくれたのが、あの店で買ったお気に入りの靴下でした。実は私、もっと靴下をたくさん買っておけばよかったと後悔したのです。なぜなら、また買えばいい、いつでも買えると思っていたのに、次にあの店に行った時にはもうお目当ての靴下がなかったからです。

mikonacolon