人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ホテルに入れなくて困った

無駄に時間を浪費し、疲れ果てた

 予約したホテルに泊まるしかないと思い直し、人影がないホテルの建物の入口まで行った。エントランスと書かれていたので、そこが入口に間違いなかったが、インターホンがない。セキュリティシステムが設置されていて、先ほど行ったウェルカムグロスホテルと全く同じ形態だった。困った、これではホテルに入れない。ここでも電話番号が明記され、連絡するようにと書いてある。だが、私は携帯を持っていないので、連絡のしようがない。これまで、このようなタイプのホテルに泊まった経験がない私は、これからどうしようかと目の前が真っ暗になった。

 それでも、何処かに別の入口がないかと、建物の周りを探し、もう一つの入口を見つけた。だが、そこも同じくセキュリティシステムが付いていた。うろうろしていると、そこへ男性が二人やってきた。彼らはカードを持っていて、中に入ろうとする。「中に人はいないのですか」と尋ねると、誰もいないと答えた。とりあえず、彼らと一緒に中に入って、何とかならないかと考えた。「部屋の番号も何もわからなくて、困っている」と事情を話すと、「残念だけど、僕らもよくわからないんだ」とすまなさそうに言う。何か連絡手段がないかと捜し回って、ホテル内をうろついていたら、バルコニーに出てしまって、今度はホテルの中に入れなくなった。迷ってしまったらしく、どうしようかと狼狽えていると、先ほどの男性が部屋にいるのを発見し、外から助けを求めた。すぐに私のところに来てくれた彼に、「このホテルから外に出るにはどう行けばいいのか」を教えて貰う。

 何とか外に出られたものの、また振出しに戻っただけのことで、何も解決できていなかった。「今夜はベッドで眠れるだろうか」などと不安が押し寄せて来た。その時、すぐ隣に小さな店があるのを見つけたので、中の様子を窺ってみた。店の中ではカウンタターに座っている高齢の女性と、中年の男性が談笑していた。彼女は高くて大きな声で機関銃のように話し、一方の男性はと言うと、スナック菓子を食べながら、終始聞き役に徹していた。彼らの様子からたいして重要な話ではないと推測した私は、店の中に入って行った。隣にあるホテルに入れないので、どうしたらいいのかわからないと話すと、「そんなバカなことがあるの?信じられない」と言うようにすごい剣幕でまくし立てた。実を言うと、彼女はスペイン語しか話せないし、私は聞き取れないので、ただそのようなニュアンスのことを言っているなあと、私が勝手に推測したに過ぎない。

 憤った彼女はホテルの入口にあるセキュリティシステムを見つめたまま、顔をしかめたままでいる。どうしようもないと諦めたのか、また店に戻って来る。こうなったら、直接電話するしか方法がないと考えた私は、電話を貸してくれるように頼んだ。男性の方がスマホを持っていて、快く承知してくれた。予約確認書の電話番号にかけてくれた後、スマホを私に渡してくれる。もちろん、私は自分で話をするつもりだったが、どうしてなのか、相手は出てくれない。通じない。「ダメみたい」と首を振って、男性に渡すと、高齢の女性が代わりにホテルの人と話をしてくれる。

 後からわかったことだが、そのホテルは事前に電話すると、スマホに6桁のセキュリティコードを送ってくれるシステムになっていた。ホテルの入口に設置されているセキュリティシステムの機械にその数字を入力すると、入口のドアが開く仕組みになっていた。肝心の部屋番号も、スマホにコードと一緒に送られてくるらしい。そんなシステムになっているとは夢にも思わない私は、無駄に疲れ、無駄に時間を浪費した。正直言って、あの時の経験は、こんな簡単な文章で表せるような状況ではなかった。苦難はさらに続いた。

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