人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

気になる整形外科

早朝から行列、これはいったい何?

 ここ数カ月あまり、私は早朝の散歩のルートを変更して歩いている。それまでは大通りに沿った、広くて視界良好な道を通っていた。実際、その道をすごく気に入っていて、気持ちもよかったのだが、急に飽きがきてしまった。それで反対方向の道を行くことにした。家から真っすぐに伸びる道をしばらく歩くとちょうど川につきあたり、川沿いは上水公園になっている。桜の季節は人で賑わったが今では人影もあまりない。桜が散っても、ツツジ、紫陽花と彩り豊かで十分楽しめるのに、人は見向きもしない。だが、それはそれで、緑に溢れた、鳥のさえずりが聞こえる空間は素晴らしい。幸運なことに、春を告げるウグイスのホーホケキョという声も聞けた。

 今では上水公園を散策し、高層マンションの前にある橋まで行くとちょうど30分なので、そこで引き返すのが日課になった。歩き始めて間もなく、気が付いたのは、あるビルの前で何やら行列ができていることだった。それも毎日で、誰も居ないのは土曜と日曜だけ。その前を通り過ぎながら、観察してみると、杖を持ったおばあさんがカートに座っていた。その人はいつもそこで何かを待っているようだ。年寄りだけかと思ったらそうではなくて、若い男性や女性も並んでいる。考えてみると、まだ6時前で、この寒さなのにどうしてと聞きたくもなる。いったい皆何を待っているのかと不思議に思わずにはいられない。

 その謎を知りたくて、誰も居ない日曜日にビルの玄関に足を踏み入れた。すると、郵便ポストが並んでいる脇にあるテーブルに張り紙がしてあった。文面は「当医院にお越しの方は予約表に順番に氏名を記入してください。受付は7時からです。○○整形外科 医院長」で、記入するためのボールペンとファイルが置かれていた。そうか、あれは診察の順番取りの列なのだ。それにしても9時から始まる診察のために6時前から並ぶなんて、いささかやり過ぎなのではないか。だが、受付が7時なのだから、早めに早めにと言うのは納得がいく。おそらく7時になったら整形外科の人が下りてきて、受付をしてくれるのだろう。私はその場に居合わせたことはないが。

 この整形外科は皆が行列を作るほど、人気があるのだろうか。念のため、ネットで検索してみると、ホームページがちゃんとあった。今はどこでも宣伝のためにwebページぐらいはあるのが普通だ。一応、ざあっと読んでは見たが、目立った特徴があるわけでもない、どこにでもあるような整形外科でしかないようだ。となると、順番取りは待合室の混雑を避けるための対策なのかと思いたくもなる。コロナだから密になるのを避けるためなのかは、以前を状況を知らない私には分からない。日によって人数は違うが少なくとも10人ぐらいは所在なさげに待っている。

 先日、私は突然左肩が痛み出して、夜一睡もできないような経験をした。その時私の頭に浮かんだのはいつも行っている町中の診療所で、スーパーの隣という最高の立地にあった。いつもと言うのは具合が悪くなった時という意味で、何かの薬を飲んでいるわけでもない。食べ物が胸につかえて苦しい時や、巻き爪で足が痛い時、雪道で転んで頭を打った時等々、困ったときはいつでもそこに飛び込んだ。だから、左肩が痛んだ時も、迷わず診療所に行った。もちろん、先生は整形外科の専門医ではないが、それなりの対応をしてくれる。次に行った時は月一度来るという専門医の先生にも見てもらったが、原因は分からずじまいだった。

 実は以前はあの整形外科のあるビルを素通りしながら、「どこも悪いところがないから診察に行くわけにもいかない」などと思っていた。つまり、私には関係ないけど的な発想をしていた。ところが、今まさに肩が痛くて行くべき事態なのに、どうしたことか、私の頭の片隅にもあの整形外科のイメージはなかった。それどころかすっかり忘れていたのだった。

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