人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

年金支給日

銀行の駐車場はどこも満杯

 帰省すると、いつも義姉のミチコさんとお気に入りの喫茶店にモーニングを食べに行くのが習慣になっている。でも、先日の15日は少し予定が違っていて、猫友の人を銀行に乗せて行ってから、モーニングに行くことになった。その人が銀行で年金を下ろした後、近くにある病院に行くためだった。近所に住んでいるその人は生活保護を受けていて、アパートにひとりで住んでいた。噂に聞いた通り、生活保護を受けると、車は手放さなければならないらしく、いつもはタクシーで病院に通っていると言う。タクシーだと病院まで2千円余りかかる。交通の便が悪い田舎では眼科や歯医者などに行くのにも大イベントのようで、お金もかかるし、気苦労も多い。

 先日はちょうどミチコさんが時間が空いていて、其れならと申し出たら、その人と食事することになった。まずは年金を下ろしたいと言うことで、空いていそうな郵便局や銀行をあちこち回ったが、何処も見るからに混んでいる。駐車場が満車状態で、何処にも入れられない。テレビのニュースなどで、年金支給日にはお年寄りが殺到するとは聞いてはいたが、まさにその通りの光景を目にして狼狽える。皆一分でも、一秒でも大事な年金を手にしたいらしい。気持ちはわかるが、お金は逃げて行きははしないのだから、そんなに急がなくてもいいのではとも思うのだが。

 結局、病院からすぐの場所にあるショッピングセンターの中にある郵便局でその人をおろした。12時ごろにまたお迎えに行かなければならないが、病院の診察がいつ終わるかわからないので、終わり次第、電話してもらうことにする。ミチコさんと私が喫茶店に行くと、案の定混んでいたが、少し待っていると席が空いた。案内された席は窓際で、外を見ると、植えられている木になんだか茶色いものが張り付いている。もしかしたら、これってセミの抜け殻か、確か去年見たときは、気持ち悪いくらいの数のセミの抜け殻が折り重なっていた。地面に無数の小さな穴が開いているのが見えた。「これって何か知ってる?セミが土の中から出てくる穴だよ」とミチコさんが言う。喫茶店の敷地に植えてある木々の名前がなんというのか知る由もないが、こんなにもセミに好かれる木が存在することに驚きを隠せない。

 田舎の喫茶店閉店時間は早い、なんと午後4時で終わりでそれが普通らしい。ここの店のモーニングはコロナ禍を経ても、値段は580円で一向に変らない。スパニッシュオムレツ、ミックスサンドイッチやシュガートーストがミニサイズでお皿に乗って出てくる。ここのモーニングは量ではなく、味がいい、美味しいことに価値がある。天井が高く、店内が広く席がゆったりしている。時にはピアノ演奏とともにゆっくり過ごせるのがここの喫茶店ならではの特徴だ。入り口のレジの前ではお客さんが待っているのにも関わらず、そんなことはお構いなしで、すっかり忘れて、ああだこうだと喋っている。決して焦らされると言うことがない点においても、貴重な喫茶店と言えるだろう。

 お腹が満たされると、今度はミチコさんが銀行に行きたいと言う。ミチコさんの目的は銀行が独自に行っているサービスで、葉書を持って行けば、鉢植えやゴミ袋が貰えるというものだ。高齢者にとっては偶数月の年金支給日のささやかな楽しみのひとつである。そんなサービスあったの?と訝しく思って尋ねると、昔はどこでもやっていたけれど、現在では地元の信用金庫だけになってしまったと嘆く。その信用金庫の本店や支店を回って、ゴミ袋とポトスの鉢植えを貰って来た。そう言えば、今はもうデイサービスに行かれているので、付き合いはあまりないが、隣の家の人を乗せて、年金支給日に銀行に駆けつけたこともあった。もちろん、隣の人の分まで鉢植えの面倒も見ていたのだった。ついでだからと言いながら、隣の庭で水やりをしていた。まあ、今もそうみたいだが。

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