人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

可愛いやんちゃ坊主

 

今では立派なオス猫、と思ったら

 実家にいるオス猫のノンさんは、元々は野良猫の子供だった。兄の月命日にお経をあげに来てもらっている寺の住職が、貰い手を捜していて、白羽の矢が立ったのが、義姉のミチコさんだった。当時ミチコさんは夫を亡くし、マルプー犬とひとりと一匹暮らしで、十分満足していた。だが、犬しか飼っていないミチコさんに目を付けた住職は、毎回スマホで仔猫の動画を見せて、ミチコさんを説得しにかかった。実を言うと、ミチコさんはどちらかというと、犬よりも大の猫好きだった。その気持ちを封印していたのは、うちの兄がネコが大嫌いだったからで、犬しか飼えないとどこかで思いこんでいた節があった。夫が亡くなったのだから、自分の大好きな猫がいくらでも飼えるはずだった。そうしなかったのは、生活のことやら、年齢の事やらが次々と頭の中をよぎったからで、今のままでいいと言う結論に至ったようだ。

 家に来るたびに、住職は「今度、家に猫を見に来てよ」とミチコさんを誘うのだが、ミチコさんは「とんでもない。一度見たら、絶対欲しくなるから行かない」と頑なに断っていた。住職の話では、寺の敷地にいつの間にか野良猫が住み着いて、その猫が生んだらしい仔猫の中の一匹がいつもうろうろしているを見かけると言う。その仔猫は逃げもせず、抱っこもできて、まあまあ可愛い顔をしているから、誰かに貰ってもらいたいと飼い主を探していた。本来なら、住職が保護すればいいのだが、生憎家には先住猫が2匹もいるので、そうもいかないのだ。

 そんなわけで、ミチコさんは住職に誘われるままに、家に猫を見に行き、抱っこしたら、もう断わるわけにはいかなくなった。自分のものにしたくなって、ついつい家に連れ帰ってしまった。本音は嬉しいのに、「一応預かってもいいけど・・・」などといちゃもんを付けて、引き受けることになった。それ以来、住職は毎月、ミチコさんがノンと名づけた猫に挨拶をするようになった。最初のうちは”嫌々”引き取ったものの、3年近くたった今では、立派な我が家の猫になった。

 私がノンさんに初めて会ったのは、帰省したお盆でノンさんは元気いっぱいのやんちゃ坊主だった。猫じゃらしに狂ったように飛びつき、疲れを知らない生命力が眩しかった。相手になる人間の方が嫌になるくらい、遊びをやめようとはしなかった。動くものには敏感で、突然、飛びついて来るので、不意を突かれたこちらは驚きを隠せなかった。あと6カ月も経てば、つまりお正月にでもなれば、もうノンさんは今のようには相手になってはくれないだろうと思うと少し寂しかった。

 さて、年末に帰省してみると、想像通り、目の前で猫じゃらしを振って、気を引いてもノンさんは全く応えてくれない。でも、大丈夫、その頃には運命に導かれたのか、2匹目の子猫が居たから。ノンさんの悲しい豹変にも、私の心は粉々になることなくいられたのは、その子のおかげだ。当然、私の好みの対象は新しい仔猫で、ノンさんのことは綺麗さっぱり諦めていた。

 ところが、ミチコさんによると、最近ノンさんの様子が少し変だと言うのだ。どう変なのかというと、あの「放っぽっといて欲しい」はずのノンさんが急に甘ったれになったらしい。ミチコさんがトイレに立つと、必ずついて来て、ミチコさんの膝の上に乗っってくる。ミチコさんは毎朝、新聞のクロスワードを解くのを日課にしているのだが、その時決まってノンさんはお邪魔虫のごとく新聞の上に寝転ぶのだ。新聞を少しずらすと、ノンさんも一緒に移動する。さらにはミチコさんの顔をおにぎり型の硬い頭でスリスリしてくる。それがノンさん流の朝の挨拶らしい。

 一番驚いたのは、もう飽きていたであろう猫じゃらしの鈴にやたらと敏感になったことだ。部屋に居ないので、何処にいったのだろうと、ミチコさんが鈴を鳴らすと、あら不思議、すぐにノンさんがやって来た。現在のノンさんはまるで仔猫時代に戻ったかのように、猫じゃらしに夢中だ。

mikonacolon




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