そんな生き方もあったのか、と仰天
昨日書いた同僚の男性の実家の話には続きがある。同僚の兄の息子は40代前半で独身だが、かと言って、結婚したくなかったわけでもない。母親が跡取り息子を結婚させようと、見合い話を持ち掛けると、素直に見合いもするのだが上手くいかない。そうこうするうちに、20数年たってしまったと言うわけなのだ。だが、今回実家を訪問してみると、新しい家の2階は長男と長女の部屋になっていた。ということは、一生、二人で一緒に暮らすということか。もしも、長男が結婚したら、長女は行き場がなくなってしまう。つまり、長男はもう結婚するつもりなどないのだろうか、もう一生独身で過ごそうと決めたのかもしれないとも受け取れる間取りなのだ。
思えば、実家の兄嫁も、長男の結婚については熱心だったが、長女のことには無関心だった。両親揃って、長女はずうっと家にいればいい、無理して結婚しなくてもいいと考えていた節があった。私には到底理解できないが、世の父親たちはできれば可愛い娘を手放したくないと本気で思っているらしい。それに、女の子なら、後々自分たちが寝たきりにでもなった場合に、面倒見てくれるだろうと言う希望的観測が透けて見えた。 同僚の実家でも同様で、父親は長女の結婚について一度も言及することはなかった。
そんな訳なので、長男が建てる新しい家に長女の部屋があるのは当たり前と言えば当たり前だった。同僚もその事については、至極当たり前のことだと受け取っていた。要するに、大事なのは後継ぎの長男の結婚の事であって、長女は好きなようにしたらいいと言う考え方だったから、長女のことは全然問題にもならなかった。この先、どう間違っても、長男が結婚することはあり得ないのだから、死ぬまで二人は実家で一緒に仲良く暮らすのだろう。両親にとっては、結婚しなくても、長男は立派な後継ぎであり、長女はこの先面倒見てもらえることになっている可愛い娘だ。彼らにとっては2人とも不可欠な存在である。
彼らには4人も子供がいたが、誰一人結婚しないので、最初のうち、「うちの子たちは”かたわ”か?」などと悩んだこともあったが、今ではとっくに諦めていた。次男も次女も実家から遠く離れた県でひとり暮らしをしていた。長男と長女だけが親元から離れずに側にいた。ここで、一つ疑問が浮かぶのだが、それは長男と長女にとって実家はそんなに居心地が良い場所なのかということだ。私などは実家に居ることにとんでもなく閉そく感を感じずにはいられなかった。要するに、自分の人生に変化が欲しくて、刺激を求めてある日実家を飛び出した。そう言う衝動に駆られるのが普通だとばかり思っていたが、それは万人に当てはまることではないらしい。
なので、実家で、長男と長女が隣の部屋同士で仲良く暮らすと言うことが信じられなかった。だが、同僚や同僚の兄夫婦にとってはたいして奇異な事でもないのだ。おそらく、彼らも最初は結婚するものと思っていたのだろうが、だんだんと無理矢理結婚させるわけにもいかなくなった。ただ、そうなる原因を作った張本人は兄夫婦で、子供を自由にさせ過ぎたのだと、同僚は指摘している。だが、もはや兄夫婦も年を取り、年金生活で、長男に頼るしか道がないのである。「豪胆だった兄があんな惨めな思いをしているなんて、何たることか」と嘆くがどうしようもない。
実家の隣りに住む親類の女性によると、以前は嫁の来てがなかった時は、皆外国人でもいいからと結婚したと言う。近所に中国人と結婚した家があって、子供もできて、後継ぎができたと喜んでいた。だが、突然、「国に帰ります」と宣言し、なんと子どもを連れて出て行ってしまった。当時嫁不足で悩んでいた農村に嫁いできたその中国人の目的はお金を稼ぐことだった。その女性は一生懸命働いて得たお金を故郷に送金していた。ある程度稼いで、もうこれくらいで十分だと判断した彼女は国に帰ると言う選択をしたのだ。ハナから日本に留まるつもりなどなかったのだから、どうしようもない。当然自分が生んだ子供だからと、大事な後継ぎを連れ去ってしまうのだから、家族の嘆きは相当なものだろう。
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