人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

ウエストミンスター寺院

 

遠くから眺めて、その美しさに感激

 ロンドンに行ったもう一つの目的は、テムズ河畔にある美術館の6階にあるレストランから、ロンドンの街を眺めることだった。最初の計画通り、ホテルの最寄り駅のキングス・クロス・セントパンクロス駅から地下鉄に乗り、10個目の駅のブラックファイアース駅で降りて、テート・モダンに行った。地上に出ると、ちょうどテムズ川を隔てた、向かい側にお目当ての美術館の建物が見えた。だが、この時の私はテムズ河畔の開放感溢れる雰囲気が気持ちよくなり、美術館はどうでもいいと思っていたらしい。ブラックファイアース橋を渡って、テート・モダンのある場所まで行ったのに、まだ開館の時間までに30分ほどあった。それで、近くにあるカフェで休憩することにした。

 そこはクロワッサンやデイニッシュなどの何種類ものパンやサンドイッチがショーケースに並び、客はその中から好きなものを選んで注文していた。私も皆と同じ様にしようと、ショーケースの中をよく見てみると、どれもこれも、とにかく高い。パン一個が4.5ポンド(日本円で約900円)もするなんてことはあり得なかった。だが間違いなく現実だった。ここは日本ではなく、ロンドンなのだから、高~いと叫びそうになるのをじっとこらえる。皆何事もなかったかのように、当然と言わんばかりに次々と注文している。私も一番安い4.5ポンドのクロワッサンとラテを注文して、支払いをしようとしたが、カードのみと言われて困った。できれば、手持ちのポンドを使いたかったからだ。今回の旅行では、噂には聞いてはいたが、ロンドンはカード社会だと言うことをひしひしと肌で感じた。

 さて、カフェでクロワッサンを食べ、コーヒーをを飲んでいるうちに、もうテート・モダンはいいかなあという気になった。つまり、テムズ河畔を散歩したほうがよっぽど気持ちがいいのではないかと思い始めていた。よく考えてみると、テート・モダンは20世紀以降の現代美術の作品を多く所蔵している美術館だった。私はと言うと、小学校の美術の教科書に載っている、モネやルノワールゴッホセザンヌといった名画にしか興味がない教養がない人間のひとりだ。私に現代美術の良さが理解出来るとはとても思えない。以前、スペインのグッゲンハイム美術館を訪れたとき、大きくて広い部屋にひっそりと置かれた小さなオブジェを発見した。そのとき、まず最初に「これはいったい何?」という疑問が浮かび、無い知恵を絞って考えようとしたが悲しいことに何も答えは見つけられなかった。どうやら私には現代美術を理解する素地がないようだ。作品の意味するものが何が何だか分からないから、つまらなくて、退屈してしまうのだ。なので、それからは極力それらとは関わらないようにして来た。それなのに、今回はただ単にテムズ河畔の景色を眺めながら、お茶を飲んだり、食事を楽しめると聞いて、のこのことテート・モダンの目の前までやって来たのだ。

 結局、私はカフェを出て、テート・モダンの入口まで行ったものの、中には入ろうとはしなかった。それからどうしたかと言うと、テムズ河畔にある遊歩道を周りにいる大勢の真似をしてして、歩き始めた。その時の天気は小雨が降っていて、決していい天気ではなかったのに、川べりを歩く開放感というか、心地良さには抗えなかった。今自分がどこに居るのか、正確な位置を確認しようと、ガイドブックにある地図を見てみた。すると、地図の右方向にあのウエストミンスター寺院とその隣にビッグベンの国会議事堂があることを発見した。つまりこのままテムズ河畔を歩いて行けば、ウエストミンスター寺院の美しい雄姿が拝めるのは間違いなかった。そう思った瞬間、私のモチベーションは上りに上がった。ウエストミンスター寺院と言えば、エリザベス女王の葬儀が行われた場所で、ニュースでは何度も見たが、それがどんな建物かなんてことは知らなかった。だが、今回の旅行で本物を目の前にして、その美しさと雄姿に感動し、心が震えた。

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