人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

初心者のつもりで

3年の間に何もかも変わっていた

 大型書店の以前とはあまりにもかけ離れた惨状に動揺してしまった私は、不安に駆られて近所の書店にガイドブックを捜しに行った。普段はそこは”使えない書店”であり、たまに覗くことはあっても目ぼしいものは何もなく、がっかりして帰るのが落ちな場所だった。どうせあるわけないかと内心思って、地球の歩き方のロンドンのガイドブックを探して店の中を一周した。やっぱりないかと諦めて店を出ようとしたときに、ふと棚の最上段に旅行ガイドのコーナーがあるのを見つけた。なんだこんなところにあるじゃないか、でも地球の歩き方のロンドンはたぶんあるわけないと思ったが、一応見てみることにした。すると、なんとロンドン23”~24”もパリ23”~24”もちゃんとあるではないか、まさに”灯台下暗し”である。

 まだ旅の計画も何も具体的なことは決めていないのに、いつ頃行くのかも定かではないのに、ガイドブックだけ買ってどうする?そう思ったのも事実だが、ただ、今年行くことは確かで、となると今から少しずつ気持ちを高めていく必要があった。ここで出会ったのも何かの縁なのだから、このまたとない機会を逃す手はない。ロンドンもパリも両方買うことにした。家に帰って、真っ先に手に取ったのはパリのガイドブックで、本を開いたら、「パリの新名所巡り」のグラビアが目を引いた。コロナ禍のこの3年間の間にパリには続々と訪れるべき名所が誕生していた。といっても、古いものを大事にしているパリのことだから、何百年も前に建てられた歴史的建造物を新しいアートスポットに生まれ変わらせていた。例えば、2021年5月には19世紀の商品取引所「ブルス・ド・コメルス」を美術館に、2021年6月には老舗デパート「サマリテーヌ」を16年の年月を経てようやくホテルやオフィスが入った複合施設として再生させていた。

 サマリテーヌのある場所を地図でよく見てみると、なんとルーブル美術館にほど近い。今まではルーブルを見学したら、さっさとホテルに帰っていたが、今度は見物がてらちょっと立ち寄ってみるのもいいか。さすがにホテルに泊まるのはためらうが、レストラン、いやお茶するぐらいはしてもいいかなあと思う。グラビアの写真で見る限り、宮殿さながらの仕様で天井や壁などの装飾が見事で美しい。なので、買い物をしなくても建物自体が丸ごと美術館として楽しめそうだ。

 新名所の誕生に胸をワクワクさせて期待感が高まったわけだが、その一方で残念な情報も知ることなった。それはシャルルドゴール空港からパリ市内を走るバスがロワシーバス1本しかないことだ。以前はたしか、シャンゼリゼやモンバルナスまで走っていたバス「ル・ビュス・ディレクト」があって便利だったが、今はもうサービスが終了していた。唯一のロワシーバスも終点は右岸のオペラガルニエで、左岸には行ってはくれない。その他の公共交通機関としてRERもあるが、あれは昔”スリが手ぐすね引いて待ち受けて居る”電車だとガイドブックに書いてあった路線だった。空港からの乗客はこれからパリ市内に向かうのだから多くの現金を持っている”カモ”みたいなものだそうだ。事の真相は定かではなく、また確かめる勇気もないので、小心者の私はいつもバスで行く方法を選択している。いずれにせよガイドブックの情報によると、RERの車内は混雑しているのは確かなようだ。

 もう20年以上も前に空港からロワシーバスに乗って、パリ東駅で降りたことがある。その頃のロワシーバスは東駅にも停車していたらしく、駅のすぐ近くのホテルに泊まった。何のためかと言うと、ストラスブールに行くためで、その方面に行く電車はパリ東駅から発車するからだ。さて、今回はユーロスターでロンドンに行く計画なので、となるとパリ北駅から乗らなければならない。パリ北駅の場所を地図で確かめてみたら、なんと東駅のすぐ近く、というより”お向かいさん”のように目と鼻の先の位置なので仰天した。知らなかった、こんなに東駅と北駅がくっついていたなんて。

 考えてみると、3年も海外旅行から遠ざかっているということは、もはや”初心者”であるといっても過言ではない。当たり前と思っていたことがそうではないことも多々あるだろうから、何があっても動揺しないことが肝心だ。きっと、そんな達観したことを言っていても、やっぱりドキドキ、オロオロしてしまって、赤っ恥をかくに決まっているのだが。

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