人生は旅

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回鍋肉(ホイコーロー)

中国の家庭料理の定番は回鍋肉!?

 日本の家庭料理の定番と言えば、頭に思い浮かぶのは、さしずめ、肉じゃがかなあ、と野本さんが答えていた。これは、NHKの夜ドラ『作りたい女と食べたい女』でのワンシーンだ。会社の昼休みに弁当を忘れてしまった野本さんが、同僚の二人の女性とベトナム料理店にランチを食べに行く。その時同僚のひとりが婚活アプリで知り合った男性とのことを話す。何でもその人は料理とか好きかどうかとか、家事は好きかどうかとかか聞かれたらしい。それを聞いて、「その男はやらせる気満々ですね」と憤慨したのは中国人の女性だった。初めて会った女性にいきなりそんなことを尋ねるのは、これからを見据えての確認と暗黙の了解を求めているのだと。当の女性は、「私、あんまり料理とか得意じゃないし、できればやりたくないんですよね」と本音を漏らす。すると「それなら料理できないと正直にいったほうがいいですよ」とアドバイスするのだが、「もしも、プロフィールにそんなこと書いたら、誰も寄ってこないですよ」と乗り気ではない。

 なので、「一応、休みの日はパンを焼いてます」だなんて書いて、取り繕うしかないらしい。それでも、「自分を偽って、合わない相手と付き合うのは時間の無駄ですよ」と中国人の女性は的を射た意見を言う。時代がどれだけ進もうと、結婚したい男性が相手の女性に求めるのは、相も変わらず家庭料理なのか、と言う話になって、肉じゃがの話題がでた。そこで、中国人の女性が、「何ですか、肉じゃがって?」と尋ねると、日本におけるおふくろの味と言うか、定番の家庭料理です、と冒頭の場面になったわけだ。野本さんが、「中国では、家庭の味って、何ですか」と聞くと、「う~ん、中国でそれにあたるのは、回鍋肉ですかねえ」との返事が返ってきた。

 回鍋肉と言えば、キャベツのみそ炒めで、そう言えば、最近とんと縁がない料理だ。そんなに食べたいと思ったこともない料理だが、以前は、いや、だいぶ前はCMでやっているクイック調味料を使って何度か作ったことがある。「キャベツと豚肉だけでできる」との、美味しいフレーズに誘惑されて、200円ほどでできるならとスーパーで買って来た。楽ちんで美味しいなら、一石二鳥とばかりに試してみたが、凄く美味しいとはいかず、美味しいでもなく、まあ、普通だった。最初のひとくちは美味しいと感じたが、あとの二口、三口が続かない。要するに、すぐに飽きてしまったのだ。CMでやっているように、凄まじいほどの勢いで爆食できるはずもなかった。世の中はそう甘くないと思い知る。それ以来、回鍋肉のバッケージには手が伸びない。伸びないどころか、それらが置いてある売り場にさえ寄りつかなくなった。

 野本さんは、もちろん、クイック調味料なんて使わず、自分でちゃんと料理する。えらい。今日会社の昼休みに回鍋肉の話題が出たので、食べたくなって作ってみました、と春日さんに作って食べさせてあげる。春日さんは、少し物足りない気もするが、「美味しかったです。ご馳走様でした」と春日さんなりの最高の賛辞を野本さんに贈る。そうやって、これまで通り、平穏で、楽しい日々が続くのだとばかり思って安心していた。ところが、今回の最後のシーンでは何やら、野本さんが浮かない顔をして考え込んでいる。どうしたのだろう、いったい何があったのだろう。その原因は、どうやら南雲さんの一言にあるようで、「今日はいちご狩りに行ってきたのですか」と聞かれたのが気に障ったらしい。つまり、春日さんは唯一の相談相手である、南雲さんに逐一野本さんとのことを報告していたのだった。

 春日さんは人と付き合うのは初めてだったらしく、「付き合うってどういうことですか」と南雲さんに相談していた。元はと言えば、二人がカップルになれたのは、南雲さんのおかげだと感謝している春日さんにしてみれば、その後の経過を伝えるのは当然のことだった。いわば、春日さんにとって南雲さんは、不慣れな大海を 航海する船の羅針盤のような存在だ。そのことをやめるように言ったら、春日さんはきっと戸惑ってしまうのではないか、と当方は勝手に考えてしまう。それとも、春日さんはいつものように、平然と、「わかりました。野本さんが嫌なら、もうやめます」とでも言うのだろうか。そのへんのところが、凄く気になる。

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