人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

マンションの一室が空き部屋に

自然と、ドラマのことを思い出して

 毎朝、散歩のときに通りすぎるマンションの部屋が空き室になった。どうしてわかるのかと言うと、いつもは白いカーテンに閉ざされて、中が見えないのに、その日は網戸の黒い網目から中が丸見えだったからだ。不思議に思ったが、すぐに、そうか、空き部屋になったんだと気付いた。その部屋は建物の一階部分で、舗道に面していて、少ないながらも人も通る。人目が気になる反面、南向きで日辺りも抜群だからか、以前、その隣の部屋が空いた時には、物凄い速さで次の人が入ったほどだ。私が通りかかると、数人の人が中をじっと見て、何やら話していた。カーテンを取り払い、わざと中を見せているようだが、初めて見る部屋は見るからに狭かった。部屋は4畳半くらいだろうか、もっとも、奥にウォークインクローゼットがあるから、実際よりも狭苦しく感じるのかもしれないが。だが、収納があるのとないのとでは、使い勝手が全然違うから、仕方のないことかもしれない。

 クローゼットの隣りには小さな扉があって、おそらく、その向こうには、キッチンとバストイレがあるのだろう。まあ、縦長の物件ではあるが、奥にもう一部屋あるとは考えにくい。いわゆる、こういった部屋はワンルームとでも言うのだろうが、私が以前知り合いに見せてもらった部屋は仕切りがなく、何もかもが一つにギュッと詰まっているような物件だった。その部屋に入った瞬間、私はなぜか息苦しさを覚えてしまった。若い頃に住んだアパートは古くて、狭くて、それでもガラ~ンとした印象があったが、そこにはなかったからだ。

 最近空室になった部屋のベランダを眺めていたら、この前まで見ていたドラマの『作りたい女と食べたい女』を思い出した。そう言えば、野本さんと春日さんが住んでいた部屋もこんなような部屋だった。ただ、二人共窓際にベッドを置いていたのに、まだ空間が残されていて、余裕でベランダに出ることができた。何が言いたいかと言うと、その近所の空き室よりも、ベランダが広い、つまり、嘘のように部屋が広いということだ。ワンルームにしては、部屋が広すぎるのではないか。現実のワンルームはベッドを置いたら、もう人が通る隙間などないのだから。いったい家賃はいくらなのだろう、などと下世話なことを今更ながら考えてしまった。

 といっても、今のご時世のワンルームの家賃なんて、私が知る由もないのだが、会社の同僚によると、7万円でも安いということだった。先日の日経新聞に新社会人へのアドバイスとして、家賃は給料の30%までに抑えるのが理想と書かれていた。となると、20万円なら、せいぜい6万円くらいの部屋ということになるが、それ以上になると、生活が苦しく感じると言うのだ。一人暮らしというのは、想像以上にお金がかかるものだからだ。正社員で、収入が安定していなければ、安心してとても住めるものでもない。

 だが、『作りたい女と食べたい女』の野本さんと春日さんは共に正社員ではなく、野本さんは派遣社員で、春日さんも契約社員だ。なのに、まあまあの部屋に住んでいる。特に不満もなく、仕事も順調だ。派遣社員というのは、優秀であれば、そんなに給料がいいものなのだろうか。ひとりで部屋を借りて、立派に生活をして行けるのは 普通のことなのだろうか。彼女たちは時には不安になったりしないのだろうか。それとも、今を生きていれば、今が充実していれば、そんなネガティブな考えは湧き上がることなどないのだろうか。

 春日さんにしたって、今の仕事はひとりでできるし、車の運転が好きだから、全くストレスがないと満足そうだ。春日さんは人の何倍も食べる。しかも淡々と、最後までペースを落とすことなく平らげる。それが気持ちいいほどの食べっぷりで、毎回その場面が楽しみだった。だが、よく考えてみると、折も折、物価高のご時勢で、今更ながら食費が気になってきた。毎回毎回、さぞかしお金がかかるだろうなあと、ドラマのテーマを通り越して、余計なことを考えてしまった。まあ、それも「ドラマなのだから、そこは気にしないで」との一言で万事丸く収まるのだが。

mikonacolon