人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

理想のカップル

お互いに求めるものが一致した、奇跡のような出会い

 早朝の散歩の際、いつになくまごついてしまった。私は毎日自動販売機でBOSSのカフェオレを買うのを日課としているのだが、今朝は小銭がなかった。手元にあるのは500円玉と千円札のみなので、仕方がないので、まずは500円玉を入れた。すると、コロンと返却される。あれ?と思って、今度はゆっくり入れてみるが、またもや返される。ああ、このことか、と同僚が言っていたことを思い出す。「新しい500円玉は自動販売機は受け付けてくれないんだよね」とかなんとか。となると、最後の頼みの綱は千円の野口さんに託すしかない。実を言うと、ここ何年か、千円札を自動販売機で使ったことはなかったが、それくらい簡単だろうと思っていた。

 まず、千円札の絵柄のマークの矢印のところに、札を入れようとするが、何たることか、入らない。何度もやってみるが、ダメなので、この販売機に見切りをつけて、別の場所にある機械で買おうと横断歩道を渡った。ところが、わかりきったことだが、またもや受け付けてもらえない。それで、私はしばし考えた。もしかしたら、絵柄の矢印は単なる説明であって、札の入口は別のところにあるのではないか、と。よく見ると、緑色がちかちかしている場所があるではないか。おそらく、この緑色には何かの意味があるはずだから、そうなると・・・と、そこが千円札の差込口に違いない。早速、千円札を差し込もうとすると、有難いことに、今度はスルスルと中に吸い込まれていく。なるほど、こういうことだったのか、と感心する。後から考えれば、当然のことで、今更感心することでもないのだが。それよりも、それくらい、早く気づけよ、ということなのだ。

 それはさておき、感心すると言えば、NHKの夜ドラ『作りたい女と食べたい女』のストーリー展開がなんとも無理がなくて、自然なことに感心する。野本さんと春日さんの二人の隣に越してきた南雲さんの一言が、春日さんの勇気ある行動を促す起爆剤になった。「お二人は付き合っているんですか」。かつては女性たちに投げかけるのに不適切と思われるような質問が堂々と市民権を得た感がある。南雲さんのその言葉に春日さんは一瞬驚かされるのだが、そのおかげで野本さんに対する自分の想いに気づいた。そうなると、もう春日さんを止めるものは何一つなかった。春日さんはこうと思ったら、一途に突き進むタイプのようで、「一緒に住むアパートを探してもいい」などと、とんでもなく飛躍したことまで口にして、野本さんを思考不能の状態に追い込む。

 一見、自分勝手とも思える春日さんの告白だが、もちろん勘違いなどではなかった。一方の野本さんは自分の片思いだとばかり思って悩んでいたので、嬉しい驚きで涙まで流している。翌朝目覚めた野本さんは、自分の頬っぺたをつねって、「昨日の出来事が夢でなかったこと」を確かめて安堵し、喜びを噛みしめる。考えてみると、二人の関係はまさに自分が望んで止まなかった片割れをそれぞれ手に入れたような理想的ともいえる関係だ。野本さんは、春日さんのために大量の料理を作り、春日さんはそれを気持ちいいほどの食べっぷりで平らげてくれる。そして、その後必ず、「ご馳走様でした。美味しかったです」と言ってくれる。毎回毎回、その度毎に春日さんの食べる姿を見ているだけで、野本さんはうっとりしてしまうのだ。幸せを感じずにはいられない、つまり、その人といると幸せを感じるということは、”好き”ということに他ならない。

 春日さんはお腹いっぱい食べたい人だから、料理好きで大量の料理を作って、食べさせてくれる野本さんはまさに理想の人以外の何ものでもない。ドラマの最初では確かに、作って食べるだけの関係だったが、次第に打ち解けてくると、プライベートの話題も話すようになった。まあ、それもほんの少しだけで、このドラマの本当の主役はあくまでも料理なので、現実的なことはどうでもいい。作ったり、食べたりしている場面の雰囲気をゆっくり味わいたい、そう思えるドラマだ。

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