人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

人間関係の呪縛

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人間関係って難しい、どうにかならないものなのか

 私の周りの人の話を聞いてみると、仕事を辞める最大の原因は人間関係だと誰もが言います。一口に人間関係と言われても、第3者の立場からはその中身もどんな風景なのかもさっぱり見えてきません。なのにみんなサラッと「人間関係」の一言で済まそうとするのです。たぶん私なんかに言ってもしょうがないと思っていて、それに自分が辞めざるを得なくなったどうしようもない気持ちをわかって欲しいとは露ほども思っていないのです。たしかに職場の問題はそこに居る人にしかわかりっこないし、むしろ早く忘れたいと思うのが人間です。

 でも皆、気持ちよく長く働くためには何よりも「人間関係」が大事なのだと言います。心から欲しいと願うのになかなか手に入らないのが人間関係というものらしいのです。昔ある先輩がなぜ今の会社に転職したか話してくれたことがありました。彼女は新卒で第一希望の貿易会社に入り、社長の秘書として働いていました。仕事は順調で卒なくこなしていたのに、ある日突然社長の顔を見るのが嫌になりました。そんな風になぜ思うようになったのかの詳しい説明は彼女の口からは語られなかったのですが、とにかく会社を辞めることにしました。すぐにでも辞めたいのですが、次の職場はどうしよう、とふと思ったのですが心配はいりませんでした。彼女の勤めていた会社には社員食堂があり、そこは部外者でも誰でも立ち寄れる場所だったので他の会社の社員と知り合いになっていたのです。「そういうことなら、うちに来たら?」と言われた彼女は誘われるままに今の会社に転職しました。

 またある友人は幼い頃からの夢を実現しようと幼稚園の先生になりました。本当のところは保育士でもよかったのですが、学校で熱心に練習したピアノを仕事に生かしたかったからでした。後になってその選択を悔やむときが来るのですが、その頃はまだ知る由もありませんでした。実際に中に入ってみると、幼稚園は想像以上に厳しい場所でした。天使のような子供たちを遊ばせて、優しく見守っている笑顔の先生たちというのは表向きで、職場では常に緊張を強いられました。友人と一緒に入った同期の新人の先生が二人いて、3人で協力してこの難局を乗り切ろうと誓いあいました。

 3人のうちのひとりだけが担任になり、当然仕事量は多く、到底一人ではこなせません。その日もクラスの園児36人分の教材づくりに手間取って、定刻を過ぎても終わりませんでした。それで友人たち二人は作業を手伝うことにしました。世間話をしながら手を動かしていると、そこへ突然先輩の先生が現れたのです、「貴方たち二人はいったい何をしているの?仕事は担任ひとりでするものでしょう。手伝ってはダメなのよ。さっさと帰りなさい!」

 そう激怒されて、3人で助け合おうとした気持ちがなんだかとても虚しいものに思えてきました。それからは何とかしたくても見て見ぬふりをし、ただ傍観するだけでした。それでも一緒に帰れる時は駅までの道すがらおしゃべりをしたりするのです。そのおしゃべりもほとんどは仕事の愚痴で、担任になった先生は毎日「辞めたい!」と家族の前で泣き事を言うしかないのだというのです。そうやってストレスをまき散らして、自分を宥め宥めて何とか笑顔を作って子供の前に立っていました。友人が言うには、彼女を偉いと思うのは、嫌々ながらでも幼稚園に出勤できること、つまり逃げ出さない勇気を持っていることだそうです。友人は担任でなくても毎日辛くて、幼稚園の空気が息苦しくて、ある日仕事をずる休みしてしまいました。そのせいで過呼吸にもなって病院のお世話になったあげくの果てに、辞めてもいいのだと気付きました。

 困難にぶち当たってすぐ辞めたら、「自分はダメな人間なのではないだろうか」とも思っていました。相当に職場の人間関係によって追い詰められて居たのですが、身体が悲鳴をあげたことで、彼女は救われたのです。いずれにしても、忍耐は美徳だという固定観念のせいで、彼女は大きな代償を払わざるを得ませんでした。

 

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