人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

パリの地下鉄で右往左往

 

パリの地下鉄は思ったより普通だった

 地下鉄の構内で次々と人が通りかかるが、誰に聞いたらいいのか、分からない。もちろん皆乗客で普通の人ばかりで制服を着た職員らしき人などはいない。さて、誰にしようかと、とりあえず急いでいないだろうと思われる人に声を掛けてみるが、取り合ってもらえない。困ったと思っていたら、学生らしき若い女の子が通りかかったので、Do you speak English?と聞いてみた。すると、意外にもフレンドリーな反応をしてくれて、その子は私が乗りたい4番線の事はあまり知らないようだった。それなのに、親切にもホームを一緒に探してくれた。どうやら、パリの地下鉄は入口によって電車のホームへの行き方が違うようなのだ。ホテルのすぐ前にある入口からなら、すぐに4番線のホームに行ける。ただ、そこにはチケットの販売機はないだけのことだ。一方の別の入口ではチケットが買える代わりに、ホームへの行き方が私のような初心者にはわかりにくい。まだまだ、パリの地下鉄は謎だらけだ。これまで、モスクワ、サンクトペテルブルグ、ベルリン、バルセロナマドリッド等のいろいろな街の地下鉄に乗ってきたが、一番ハードルが高い気がする。

 話を戻すと、あの時の女の子は、赤の他人なのにとても親身になってくれた。自分も忙しいだろうに、見ず知らずのおばさんに声をかけられたばっかりに時間をとられてしまっていた。本当に申し訳ない。実はこう言ったことはひと昔前では考えられないことで、誰にも構ってもらえないのが当たり前だった。

 見知らぬ人の親切のおかげで、無事にパリ北駅に行って帰って来ることができた。ホテルから北駅までは地下鉄でわずか20分ほどで、そのあまりの近さに仰天した。最初の私の計画では、いっそバスで行ってしまおうかなどと簡単に考えていたが、実際にはバスは本数がなく、しかも45分くらいかかってしまうのだ。それを考えたら、いつまでも頑固に「パリの地下鉄は怖いから乗りたくない」などと言っているのは、いかがなものかと思う。それに実際に地下鉄に乗ってみたら、ごくごく普通で、身の危険は感じなかった。今回は思いがけなく地下鉄に乗る体験ができて、そのおかげで、パリでの行動範囲が広がった気がする。

 北駅からの帰りにもう一度、地下鉄の入口に行ってみるが、さっぱりホームの場所がわからない。おそらく階段を下に降りて行けば、乗り場があるらしいが何の表示もないので、自分では探せなかった。なので、この入口は使わないと決め、ホテルのすぐ前にある入口を利用することにした。もちろん不安だったが、幸運なことにすぐに4番線のホームがどこかわかった。

 これは余談だが、私が地下鉄の改札口でチケットを差し込み口に入れて改札を通ったとき、若い男の子がひとり何やらうろうろしているのに気づいた。彼がなかなか中に入ろうとしないので、もしかしたら、チケットが買えずに困っているのかもと推測した。以前、ウィーンで地下鉄に乗りたいのにチケット売り場が無くて、改札を通れなかった自分をふとふと思い出した。それで私は彼に、「チケットを持っていないの?」と聞いてみると「そうだ」と言う。その瞬間、私はあることを思いついた。それは自分が持っている4枚のうちの一枚を彼にあげることだった。もういつパリに来られるかわからないので、どうせならいいかと思ったのだ。彼の方をよく見ると、どうやら彼女もいるらしいとわかったので、「2枚、必要?」と尋ねた後、チケットを2枚差し出した。彼は「いくらですか・・・」みたいなことを言うのだが、私は「あげるから」と言ってホームに向かった。

 

 さて、ここまで書き終えて顔を上げると、カフェの人がやってきて、「注文は他にないか」と聞いてきた。つまり、早く出て行って欲しいと言うことだった。しかたがないので、もっと居たかったが、退散することにした。

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