人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

旅の情景、パリの北駅にて

実感がこもっている記述、懐かしい

 パリの北駅でユーロスターを待つ間、時間つぶしのために書いた散文は、次のようなものだった。

 2023年、10月27日金曜日

 今、パリ北駅の真ん前にある、カフェ”NARD CAFE”でこれを書いている。12時1分発のロンドンのキングセントパンクロス駅行きのユーロスターを待っているのだが、駅の中が寒すぎて、外に逃げて来た。駅の中にはどこにも暖かい場所がないにもかかわらず皆おとなしくベンチに腰をおろして待っている。皆、凄いね、想像を遥かに超える寒さなのに。パリに来てから、ずうっと雨だった。

 そのせいか、洗濯物の乾きが悪い。特に靴下で、厚手のものが全然、乾かない。パリは乾燥していて、一晩でジーンズもパリパリに乾くと思っていたのに。それはさておき、今はモスクワのユニクロで買ったダウンコートを着て、日記を書いている。もっとも、この冬仕様の装備はロンドンに向けての準備のはずだったのに。パリも負けず劣らずに寒い。

 私はどうやら早く駅に来すぎたようだ。というのも、地下鉄に乗るのに慣れていなくて、不安でしようがなかったからだ。気持ちが急いて、できるだけ早く駅に行きたくて仕方なかった。私が地下鉄に乗るなんてありえない、と思っていた。だが、乗らざるを得なくなった。それは、ホテルのフロントで、「明日の朝、タクシーを呼んで欲しい」と頼んだら、断られてしまったからだ。どう考えても納得できないが、「Why?」と尋ねても埒が明かない。相手は「そう言うことになっている」としか答えてはくれない。

 つまり、ホテルから手配するタクシーはエアポート(空港)しか行かないのだと言う。「そんなバカなことが・・・」と内心思ったが、ダメなものはダメなのだ。こちらとしては、「タクシーで行けばいい」と簡単に考えていたから、びっくり仰天した。困った、絶体絶命だった。それで、一体全体、私はどうしたらいいのと、素直に助けを求めた。すると、フロントの女性は「地下鉄の4番線に乗れば、簡単に行ける」と教えてくれる。しかも、地下鉄の駅は、ホテルを出ると、目と鼻の先にあった。

 実を言うと、その日はルーブル美術館に行って帰ってきたばかりで、足が棒になっていた。すぐにでも部屋でベッドに横になりたかった。だが、疲れているだなんて言ってる場合ではない。「今から行ってくる」とそう告げるとホテルから飛び出した。パリで地下鉄に乗るのはこれが初めてで、ドキドキする。地下鉄の入口の階段を降りたものの、チケットを持っていないことに気付く。あろうことか、そこにはチケットの券売機がなかった。急いで、ホテルに引き返し、フロントの女性にチケットはどこで買えるのか尋ねた。すると、彼女は目と鼻の先にある別の地下鉄の入口を教えてくれた。そこなら券売機があるので、チケットが買えた。

 実を言うと、私がパリで二番目に泊まったホテル・リヴォリの最寄り駅である、シャトレ・アールには出口が14個もあった。もちろん、このことは後で分かったことなのだが、そんなこととは知らない私は帰りに迷子になった。つまり、出口を間違えようものなら、たちまち「私は今どこにいますか」と地図を差し出して、誰かに助けを求めなければならなかった。

 さて、改札を通ろうとしたが、チケットをどこに通したらいいのかわからない。日本のようにわかりやすいように出来てはいないのだ。窓口の向こうにいる男性に、「どこにチケットを入れたらいいのですか」と尋ねると、「イエローなんとか」という答えが返って来た。よく見ると、改札口の下の方に何やら黄色い、小さな差込口があるが、何の表示もないので分かりにくい。何しろ、パリの地下鉄初体験の私は、戸惑うことが多すぎる。やっと中にはいれたものの、今度はホームがわからない。私が乗りたいのは4番だが、この駅からは1番と7番も出ているので初心者には複雑すぎる。それに1番と7番はちゃんと表示があるのに、4番はどこにもないので、右往左往してしまった。こんな時、誰かに聞かなければならないが、さて誰に聞いたらいいのか。でも大丈夫、この後救世主が現れた。

mikonacolon