人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

書店員の愚痴

売れなかった雑誌の付録は廃棄!?

 TBSラジオの「宮藤さんに言ってもしようがないんですけど」を久しぶりに聞いてみた。今回は書店員の愚痴を聞こうと言うことで、同じ中規模書店に勤める男女二人がゲストに来てくれた。MCの宮藤さんが「そもそも、どうして書店員になろうと思ったのですか」と尋ねると、そのうちのひとりのAさんは「僕は甚だ勤労意欲がない人間なので・・・」と話し出す。好きなものに囲まれていたら、続くのかもしれない考えて、書店員になって、かれこれ11年になると言う。もうひとりのBさんは、たまたま書店でイベントをやっている時に立ち会うことになり、偶然求人募集の貼り紙を見た。面接を受けてみたら採用され、今に至って10年ということらしい。

 二人にとって、書店員にとって、”困ったお客さん”というのはどんな人なのだろうか。それは、本のタイトルもわからない、出版社もわからないのにも関わらず、その本を買いに来る人、だそうだ。例えば、「今日の新聞に公告が出ていたあの本」とか「テレビの番組で紹介されていたあの本」とかなどと、訳のわからないことを言って、書店員の本の知識を試す、いや、惑わせ、困らす、実に迷惑千万な人たちのことだ。以前、正直に「わかりません」と言ったら、凄い剣幕で怒られてしまった。なので、こちらも大いに反省し、できるだけお客に寄り添うような対応をするように努力している。仕方がないので、自分の持っている想像力を最大限に発揮し、「もしかしたら、○○(本のタイトル)ではないですか」とか「何々のような話ではないですか」などと、お客の記憶力を刺激する。虚しい時間が過ぎていくだけだが、書店員なのだから、お客に寄り添う振りだけでもしなければならない。そうしているうちに、お客の方が折れて、「家に帰って、調べてからまた来ます」と言ってくれて初めて、書店員は解放される。我慢比べのようなものだが、訳のわからないことを言うお客さんが探す本は見つかった試しがない。本に関しては百戦錬磨のベテラン書店員であっても、何か頼りになる情報がなければ、奇跡は起こせない。

 書店員が一番驚いたのが、レジで会計するときに、「袋は有料です」と言ったら、「裸で持って帰れと言うのか!」と激怒されたことだ。つまり、お客さんが言う裸というのは本をそのまま、ということで、袋に入れない本は裸同然という意味らしい。確かに、外が雨の時などは、さすがに”裸”のままでは渡しづらく、袋をサービスしてしまったこともあったと書店員のBさんは笑いながら話す。

 さて、書店員の仕事の内容についてだが、お二人の話を聞いて、「こんなことまでするのか」と驚愕したことがある。それは、以前は買っていたが、今は滅多に買わない女性誌のことで、最近はどの雑誌も素敵な付録が付いている。ブランド物のトートバッグだったり、お財布、ポーチ類に至るまで、それこそより取り見取りだ。正直言って、本自体はどうでもよくて、付録だけ欲しいと思ったことが何度もある。たいていは、本と付録はラップで一緒になっているが、実はあれは書店員がいちいちセットして、ラップをかける作業をしているのだ。つまり、本屋に納品される時は本と付録は別々の箱に入っている。想像するだけで、頭がくらくらしてしまう。さらに驚いたことには、本が売れ残った場合の処理の仕方で、本自体は返品するのはわかるが、付録はその場で廃棄すると言うのがどうしても納得できない。まさか、そんなことになっていたとは・・・。これでは今流行りのSDGsに真っ向から逆行しているのではないか。そう言えば、最近新聞の見出しに「EUではブランドもの大量廃棄禁止に」というフレーズを見つけたばかりだ。

 番組の最後で、宮藤さんが「昨今は活字離れ、と言うか、本離れが加速していると言われているが、書店員は現状をどう感じていますか」という質問をした。すると、意外なことに二人共そんなに危機感は感じていないと答えた。本が売れなくなったと感じないのは、おそらく二人が書店員になった頃からすでにもう、本離れが起っていたからだ。ただ、はっきりと感じることは、ひとりひとりの購入額は減っているということ。例えば、以前は給料日に3万くらい買っていく人もいたのに、今ではそんな人はごくわずかだ。私にしたって、昔は本を月に2万円ほど買っていたが、今では一万円買うかどうかだから、それには頷ける。

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