作った方がお得、それとも、そうでもないの？
ポイントカードというものを私は滅多に作らない。以前は行く先々でお店の人に言われるままに、何でもかんでも作っていたが、今は断ることが多い。というのも、ある新聞の記事でポイントカードについての真実を知ってしまったからだ。それは、あまり利用しない店のポイントは知らない間に失効することが多いからだ。たまに利用してはいるが、今日はポイント2倍だから、などと積極的に利用しない。なので、ポイントが泡のように消えてしまっても、まあ仕方ないかで終わるが、全体として見ると、何とその消えたポイントの総数が物凄いことになっていた。実にもったいないことだと、その記事の筆者は嘆いていた。そんなことなら、ポイントカードを作らない方がましだ、と考えた私は、ポイントカードを作らなくなった。
もちろん、しょっちゅう行くスーパーのカードは持っている。買うものによって、スーパーを使い分けているので、スーパーだけでも、4種類ぐらいある。当然ポイントは自然と溜まっていくので、月末の買い物に利用して、まあまあ、お得感を味わっている。ただ、一番困るのが、薬局のポイントカードだ。これまた店によって使い分けているので、ポイントもおいそれとは堪らないと考えて、ポイントカードは作っていない。会計時にいちいち取り出すのが面倒だから、無くてもいいかと思っていたら、最近ではある変化があった。
それは、近所に昔からあったサイゼリアの店舗が、新しい薬局のぱぱすに変わったことだ。ちょうど開店セールをやっていて、「全品２０％引き」の赤い垂れ幕が目立っていた。そうだ、風邪薬のパブロン微粒が切れかかっていたことを思い出した。次々とお客さんが店の中に入っていくのを見て、私も釣られて入ってみる。ここのパブロン微粒の44包入りのパックは1600円で、いつも買う店より高めだが、何しろ20％引きだから、払うお金はそう変わらなかった。レジで会計しようとすると、「ポイントカードを作りませんか。今なら表にある12個入りのトイレットペーパーがサービスで付きます」と言われて戸惑った。もちろん、トイレットペーパーは欲しいが、私はポイントカードは作らないと決めている、それにたぶんこの薬局を利用することはもうないだろうし。
結局、ポイントカードは作らずに会計したが、後から考えると、やっぱり作っておけばよかったのかなあとも思った。たとえ、それがその場限りだとわかっていても。というのも、現在は物価高で、けち臭いことを言うかもしれないが、10円、20円の違いを昔よりもはるかに重く感じてしまうから。いつも買う風邪薬を買っただけで、トイレットペーパーを貰える恩恵が与えられるのだから、利用しない手はない。
そう言えば、以前も、薬局の店員さんの言葉が重く響いた時があった。それは、忙しさに紛れて、必要不可欠なトイレットペーパーが切れるのを見過ごしていたら、夜遅くに薬局まで走る羽目になった。普段行くところではなくて、滅多に行かない店だったが、その時に言われてしまった。「お忙しいでしょうが、住所と名前を記入するお時間はありませんか。ポイントカードを作っていただくと、今なら商品が20％になりますよ」と。いやはや、何とも美味しい話で、喉から手が出そうだったが、その時もポイントカードを作らない主義を貫いた。たったの5％などではない、20％と言われたら、さすがに心は動揺せざるを得ない。もしかしたら、私はとんでもなく損をしているのかもしれない、と思えてくる。
ポイントカードのことを今更ながら持ち出したのは、実家にいる義姉のミチコさんのことを思い出したからだった。年末年始、私たちは回転ずしのスシローに2度も食べに行った。その時、ミチコさんはポーチから、シニア用のポイントカードを取り出して、会計をした。沢山のポイントカードが入っているので、見つけるのが大変だった。私が「めんどくさくない？」と尋ねると、いっこうに気にしていない。その時はひとり50円の割引になったようで、二人だから100円引きになったので、「お得だわ」と素直に喜んだ。要するに、人間というものはわずかのことであっても、安くなれば素直に嬉しいと感じる生きものなのだ。ましてや、ミチコさんは年金生活者なのだから、細かいお金に敏感な世代だ。生活に困ってはいないが、節約したいのはやまやまなのだ。それに、ミチコさんは便利屋と言うか、アッシーのような役目を担っているようで、友だちから頼られている。意地悪い見方をすれば、上手く利用されているので、飲食店に行く機会が多いから仕方ないか。
ポイントカードのスタンプがだんだんと溜まっていくのが楽しみでしようがない。そんなミチコさんの心理が理解できなくて、戸惑ってばかりいた私だが、今回の薬局の件では、ポイントカードを作らない主義をやめてもいいかなあとチラッと思ってしまった。
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