旅行で知り合ったAさんは、ご主人に先立たれたあとは自由を謳歌している。
82歳になるAさんはものをはっきりいう、しっかり者の女性である。
海外旅行も行っていない国はないくらい行っているし、趣味は俳句で、習字も習ってい
る。
ご主人が残してくれた億単位の遺産を相続し、経済的には何の心配もいらない羨ましい身分である。
息子夫婦とは別に離れで暮らしているし、自由でいたいので、家族との食事は夜だけと決めている。
自由気ままでマイペースの充実した毎日を本人も気に入っているし、なんの不満もないという。
とはいえ、やはりひとりは淋しいらしく「お父さんが生きていてくれたら.いいのに...」
とため息をつく。
俳句や習字、その他の知り合いがいっぱいいるAさんなのだが............。
その一方で「お父さんが生きていたら、こんな自由はなかった。習い事もできなかったと思う。」ともいう。
「お父さんが死んでくれたおかげで、自分は今自由で充実した毎日を過ごせる」
と、はっきり他人のまえでいえるのだ。
Aさんはどう見ても、優しいおばあちゃんではないし、みんなから好かれるいい人でもない。
「自分のペースで好きに生きる」=自分の幸せ、と考えて迷わず突っ走ってしまう。
お孫さんに、「お金を出してあげるからハワイに行こう」と誘ったら
断られたそうだ。
そんな自分勝手で自己中心のAさんだが、信じられないくらい純粋で前向きなのだ。
こちらが「つまらない」と思うことでも、彼女は「素晴らしい」と言う。
海外旅行に一緒に行った人にバスに置き去りにされても、おかまいなく何回もそのひとと旅行にいく。
私みたいに「こりごりする」ということがないらしいのです。
旅行会社にやりたい放題されても、そんなこと気にもせず、それでもまたツアーに申し込むのだ。
「どうしてそんな思いをしてまで旅行にいくのですか?」と聞いたことがある。
すると、彼女はにっこり笑って、「だっておもしろいんだもん」といったのです。
どんなマイナスの感情も、旺盛な好奇心のまえでは消えてしまうらしいのです。
それが彼女の生きる原動力になっているようです。
82歳なのにスタスタと早く歩き、毎日ウオーキングも欠かさないAさんはエネルギー
に満ち溢れた高齢者の代表です。
mikonacolon