人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

列車の旅のお供は駅弁

今週のお題「お弁当」

穴子めしが最高!

 私が今まで旅した外国、特にヨーロッパの国々に比べると、日本はとてもいい国だと思う。何のことを言っているのかというと、列車の旅に欠かせない駅弁のことで、外国には駅弁に相当するものがない。それにあったとしても、サンドイッチくらいでバリエーションとは無縁だ。外国に行って、目的地まで5時間くらいかかるTGVに乗っても、誰も何かを食べようとはしない。日本なら、列車が動き出すと同時に、あちらこちらから、カサコソと駅弁の包みを開けようとする音が聞こえてくるのがいつものことなのに。そんな周りの静けさを無視して、私は駅の売店やホテルからの道沿いで見つけたパン屋で買い込んだ食べ物にかぶりつく。周りがどうあろうと、空腹に耐えられないので、後ろめたさなど一切感じないでいられる。

 そこで、どうして外国には駅弁がないのだろうという考えても答えが出ない疑問が湧いてくる。そんな不毛な考えが浮かんだのは最初だけで、今では”そう言うもの”だからと、”郷に入っては郷に従え”という格言ですぐに方が付く。日本の駅弁文化は素晴らしいの一言に尽きるが、昨今はあの新幹線の車内販売が終了したとの残念なニュースもあった。だが、心配はいらない、駅の売店にはてんこ盛りに積まれた駅弁がズラリと並んでいて、私たちを誘惑してくる。東京駅にでも行けば、全国の有名な駅弁がいとも簡単に手に入るという特典もある。こんな幸せは外国のどこにもない。

 駅弁の人気第一位は何と言っても幕の内弁当だ。それを証拠に新幹線の車内販売で最初に売り切れるのは幕の内弁当で、白いご飯が皆好きらしく、最後まで残るのは鳥めしか焼肉弁当だった。もっともこれは私が遭遇しただけのことで、一般的ではないかもしれない。あの時、私は車内販売のお姉さんを追いかけて、やっと追いついたのに、もう幕の内は売り切れていた。もう無いとわかると、食べられない現実に出会うと、やたらと食べたくなり、ひもじい思いをするのが人というものである。結局、私は鳥めしも焼肉弁当も買う気にはならず、何も食べなかった。

 そんな悲惨な思いをしたにも関わらず、現在の私は幕の内弁当はもう買わない。なぜかというと、興味が無くなったと言うか、もう嫌になってしまったからだ。それは、以前幕の内弁当を買って食べている時にどうしたことか、その中身が、何種類か入っているうちのおかずがとても食べられたものではなかったことに起因している。例えば、魚の切り身が脂っぽくて、美味しくなかったり、あるいは煮物に入っているにんじんが生煮えでゴリゴリだったりと言った、信じられない事態に遭遇したからだ。考えてみると、幕の内というのはおかずの種類が豊富でいろいろな味が楽しめるから、万人に人気があるのだ。それなのに、その肝心のおかずが美味しくなければ、幕の内弁当の意味がない。一つ一つのおかずがどれも美味しいからこそ、白いご飯と一緒に楽しめるのだ。

 それに加えて、昨今の物価高で、以前は千円も出せば、幕の内弁当は買えたのに、今では高いものなら税込み千五百円もするとなれば、財布のひもは緩まない。一時は家からイクラやスモークサーモンのおにぎりを持参して列車に乗り込んだこともあったが、それでは日常の延長で面白くない。やはり、特別な何かを買って非日常を味わいたいと思った。それで、今買うのはもっぱら穴子めしで、これは千二百円ぐらいで、消費税込みならもっとするが、まあこれくらいならいいか、と納得できるくらい美味しい。

 穴子めしは人気があるらしく、いつもあると言うわけにはいかないが、それでも最後のひとつに出会えた時はうれしい限りだ。行きが穴子めしで、帰りが鰻弁当だったこともあったが、やはり、柔らかく煮あげてあるアナゴめしは最高だった。実を言うと、昔はイクラやサーモンが入っている海鮮弁当の方が好きだったが、今は好みが変わってきたのか、煮魚の方が好きになった。

 そう言えば、私は法事のために7月に帰省する予定がある。その時に車内で何を食べようか、もし穴子めしがなかったらどうしようかとあれこれ考えると、今から楽しみでならない。

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