人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

フライパンを買った

マーブルコートとダイヤモンドコート、どちらがいい?

 今まで使っていたフライパン二つがどれも駄目になった。フライパンなんて、一つで十分なのだが、最初に買ったフライパンがあまりにも軽すぎたので、これはまずいと思って、また別の物を買った。最初のフライパンは料理中に何かの拍子に軽く触れただけで、向きが変わってしまうことがあった。なので、何かあったらと恐ろしくなり、今度は軽量は軽量でもそれなりの重さの物を買った。それが、表面がマーブルコート仕様のもので、どれくらい使ったか記憶はないが、ずうっと愛用してきた。だが、最近は料理していると、焦げ付いたり、水なしの冷凍餃子が上手く焼けなくなってしまった。どうにもこうにも気分が悪く、この最悪な事態を何とかしなければと思った。

 ただでさえ、料理したくないのに、使えないフライパンに翻弄されている自分、それってどうにかならないのか。そんな楽しくない事態を解決するには、お金を出してフライパンを買えばいいだけのことだ。浅薄な私は、新しいフライパンが生み出す夢のような状況に暫し思いをはせた。もしかしたら、古いフライパンとは違って、熱の通りが格段に良くなるかもしれない。今までどうにもこうにも固いままで、ちっとも柔らかくならなかったキャベツが、見事に甘くて柔らかく変身するかもしれないなどという妄想を抱いた。ただ、そんな時いつでも甘い夢に水を差すのはもうひとりの自分で、「新しいフライパンを買ったからって、たいして何も変わらないよ。夢を見るのもいい加減にしたら」と私を戒める。そりゃあ、そうだ、その通り。現実をみなきゃと思い直すが、フライパンをそろそろ取り換えた方がいいのは明かだった。

 さて、近所のスーパーに行くと、早速台所用品売り場でフライパンを探した。そこには2種類のフライパン、マーブルコートとダイヤモンドコート仕様の物が置いてあった。マーブルコートは今まで使っていたものなので、これでいいかと手に取る。フライパンには大きめのタグが付いていて、宣伝文句は「Wマーブル、変形しにくい軽量タイプ」と書いてある。マーブルコート仕様はグレイのフライパンに白と黒の点々が付いているタイプで、長年使っているうちにいつの間にか点々はすっかり消えて、ただのグレイのフライパンになる運命にある。また、タグには「長持ちさせるコツ」という注意事項も付いていて、火加減は中火以下だの、料理は保存しないだの、洗うのは冷めてからだのといちいち煩いと文句を言いたくなる。

 何のことはない、自慢にもならないが、私はそのやってはいけないことすべてを今までやっていた。でも、最近、テレビ番組で、フライパンは熱いまま水をかけて洗ってはいけないのだということを知った。そうか、使った後すぐに洗い物をしてさっさと片づけたい私はそんなこととは露知らず、平気でやっていた。フライパンにも思いやりをというわけかと少々面倒臭くなったが、そのアドバイスには従った方がいいことはわかっている。

 もちろん、マーブルコート仕様の思いやりを持って使わなければならないフライパンを買ったが、もう一つのダイヤモンドコート仕様のフライパンが気になってしようがない。それで、2つのフライパンの使い比べをしてみようと思い立った。ダイヤモンドコートの方に付いているタグには「超軽~い。プラスすべすべ加工」と書いてある。こちらは教訓的な注意事項など付いていないのが気に入った。二つのフライパンで試しに卵焼きを焼いてみた。もちろん油をひいてだが、マーブルの方はまあ普通で何の問題もない。さて、ダイヤモンドの方はどうかというと、これがお皿に乗せようとすると、フライパンの表面を卵がツルツルと気持ちよく滑ってゆく。なんとも新鮮な驚きだった。フライパンひとつでこんなにも爽快な気分になれることが信じられない。まさかの料理をしながらのいい意味での気分転換である。

 ただ、今までとは違って、戸惑ったこともあった。それはマーブルコート、ダイヤモンドコート両方に言えることだが、冷めると脂が固まって白くなることで、冷めてから洗おうと思うと実に扱いにくい。なので、フライパンを使ったら、その場でティッシュペーパーで残っている油を完全にふき取って置かなければならない。フライパンに気を使って、やるべきひと手間が増えた。

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