人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

高級マンションへの憧れ

今週のお題「住みたい場所」

f:id:mikonacolon:20210630125420j:plain一度ぐらいは覗き見したい好奇心に駆られて

 思えば、私の場合、住みたい場所はその時々で変わっていきました。若い頃東京に住んでいた時、住みたい街のランキングで第1位は吉祥寺でした。アーケード街があって買い物に便利で、歩いて行けるところに井之頭公園がある最高の立地だったからです。都会の喧騒の中にあって、ホッとできる場所、つまり緑溢れる空間が広がっている貴重な場所でした。花見の季節に友達とこの公園を訪れた私は、花びらの絨毯の上を歩きながらふと思ったのです。「ここに住んでみたら、どうだろうか?」と。今の私たちはふらっと来ただけのよそ者なのですが、これが日常になったらいつでも好きな時にこの幸せを味わえます。花見し放題の特典が与えられるのならどんなにかいいだろうと舞い上がっていたのでした。その時はそう思っても、ただの思いつきなので家に帰れば、あっという間に花見の感動を忘れました。それから先も吉祥寺に住むことはありませんでした。運命のような偶然も起らなかったので縁がなかったというしかないのです。

 それから、時が流れて周りの友達がマンションを買いたいと言うようになりました。田舎育ちの私にして見れば、マンションは家ではないのです。遊びに行って思ったのは、「まるでロッカーの引き出しの一つみたい」ということでした。でもその引き出しは私には想像もできないほど価値があるのでした。友達にとっては一生で最大の買い物で大事な財産でした。マンションを買ったことによって、彼女は生きる目的ができたみたいで、前より明るくなりました。これからどうなるかという不安よりも、何とかしなきゃというやる気の方が勝っていました。小さなロッカーの引き出しはそれから彼女の心の支えとなってくれたのです。

 マンションに興味がない私も、テレビなどで高級マンションの豪華さを見せつけられると、思わずじっと見てしまいます。こんな生活もあるのかと自分との差を痛感すると同時に、私などは知る由もない様々な事情もあるのだろうと余計なことまで考えてしまうのです。高級マンションというと、身近にはドラマでその生活ぶりを覗うことができます。例えば、韓国ドラマ『星から来たあなた』ではヒロインが最上階にある広いベランダに立ってこう言います。「やっとここまで来たのに、この場所を奪われるかもしれないなんて」。苦労して俳優としてのキャリアを積み重ねてここまで来たのに、スキャンダルで窮地に陥っているのです。街全体が見渡せる、眺めのいい空間は、彼女にとって掴み取って得られたものであって、いわゆる成功の象徴でした。似たような場面は『愛するウンドン』のなかでもあり、俳優として成功を収めた主人公は広すぎるバルコニーで物思いに耽るのが日課です。建物が立ち並ぶ界隈の中で暮らしながら一息つける、彼にとってはオアシスのような場所でした。成功したものだけが味わえる特権のようにも思えてきました。

 偶然にも、私は高級マンションというものを体験する機会を得ました。それは台湾に3泊4日の予定で旅行に行った時に泊ったのがコンドミニアムだったのです。その物件の所有者がマンションをホテルとして貸しているのですが、ちゃんと掃除もしてくれてタオルとかも取り換えてくれるのです。台湾の中心部にあって、どこに行くにも便利な立地でとても気に入りました。中でも驚いたのは、部屋一つ分はあるかと思われる広さのバルコニーでした。友達と外を眺めていたら、隣の柵からゴールデンリトリバーが顔を出したので仰天しました。呆然としていたら、またもや別の犬が現れて2匹でキャンキャンと騒ぎだしました。その声に何事かと思ったのか、とうとう飼い主まで現れました。挨拶をして話をしながら、ちらっと見えたのは野菜菜園でした。どうやら日当たりのいい最高の環境を利用して野菜作りに勤しんでいるようです。その一方で、対照的なのは反対側にあるバルコニーの光景でした。柵の間から見えるのは、いかにも趣味のいい石庭でした。京都のどこかの寺の庭を真似したかのような、空間を有効利用しようなどと言う余計な気持ちが微塵もないのが素晴らしかったです。右手にあるお宅からは生活の匂いを、左手のお宅からは風流を感じられた貴重な経験をしたのでした。

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