人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

雨が降ると困る家

今週のお題「雨の日の過ごし方」

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雨が降ると部屋が使えないのに

 雨が降る日をどう過ごすか、そんなことを考えながら歩いていたら、ふと頭の中に遠い記憶が蘇ってきました。あれはまだ若い頃、すでに結婚して子供もいる友達の家に遊びに行った時のことです。あの日も朝からシトシトと雨が降っていました。一緒に行った友人は仲良しなのでよく来ていたのですが、私は初めての訪問でした。彼女の住まいは何階建てかはもう忘れてしまったのですが、マンションの最上階の角部屋でした。玄関のドアを開けると、段ボールが山積みで入口を半分ほど塞いでいるのに、まずびっくりしてしまいました。呆然としている私をしり目に友達は慣れたもので平気な顔をしています。狭い玄関をなんとか通り抜けて、リビングのソファに腰かけて落ち着いた時、彼女が「押入れが狭くて荷物が入らないのよ」と理由を説明してくれました。

 それから三人で談笑していたのですが、すぐに私はあることが気になってしまったのです。それは私たちがいるリビングの隣は畳の部屋なのですが、部屋の真ん中に新聞紙が敷かれてあり、ブルーのバケツが置いてあるのです。「あのバケツはいったい何なのだろう?」そう思ってしまったら、どうしても視線は隣の部屋に向いてしまいます。話をしていても”心ここにあらず”だったのでしょう。遠慮して聞けない私に彼女は「雨漏りがするからあの部屋は使えないの」と教えてくれたのです。よく見ると、部屋には何も家具が置いてありません。きっと押し入れも使えないので、玄関に段ボールを積んで置くしかないのです。

 彼女の話によると、雨の日には天井に雨が浸み込んできて、雨漏りするので二つあるうちのひと部屋は使えなくなるのです。だから雨の季節は大変な思いをすることになるのですが、今ではもう慣れっこになりました。マンションで雨漏りなんて聞いたことはありませんが、最上階というのはそんなこともあるのかと目から鱗でした。それなら、大家さんに行って直してもらえばいいのではと第三者としては思うのですが、あまり乗り気ではないようです。「そんなことできない」でも「ここから引っ越すつもりもない」というのが彼女の本音なのでした。彼女なりの思惑や事情があるのでしょう、何も知らない私はもうそのことには触れないように話を逸らすしかありませんでした。

 その後、同僚がマンションから公共住宅に引っ越すので、手伝いに行ったことがありました。その時、初めて今までの住まいがどんなに大変だったかを知りました。私も遊びに行ったことがあるそのマンションは、日当たりがよく公園の近くにあって最高の立地だと誰もが思っていました。同僚は最上階に住んでいたのですが、ある日、押し入れの天袋にしまった布団がビショビショに濡れていることに仰天したのです。どうやら壁から雨水が浸み込んできてしまうのですが、そのことを大家さんには黙っていました。その代わり、「こんなところには居られない」と引っ越しを考え始めました。そうしているうちに、幸運にも市営住宅の抽選に当たったのでした。この同僚の話からも分かるように、普通は「すぐに直してほしい」とは素直に言えないのが現実なのだと知りました。

 それにしても、雨が降ったら、家の中でも避難しなければならないのは辛いものがあります。ただでさえ、ジメジメでジトジトして、黴が気になるし、洗濯物も乾かないのでオロオロしてしまうのに。いつだったか、雨が降り続いた時、ついに身体を拭くバスタオルがなくなって、仕方なくTシャツを代わりに使ってしまいました。昔海外のユースホステルに泊って、タオルがビショビショで使い物にならなくなった時の苦肉の策でした。あの時の経験からか、とっさに身体が動いてしまったのです。晴耕雨読を気取って優雅に読書を楽しみたいところですが、現実は長雨に翻弄されてしまうのでした。

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