人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

パリの地下鉄は想像以上に手強かった

チケットを買うのに一苦労

 ホテル、フロル・リヴォリのフロントにいるお姉さんのアドバイスのおかげで、私はなんとかパリ北駅に行って、無事ホテルに戻ってくることができた。ホテルに着くと、すぐさま、お姉さんにフランス語で C’est bon ?(上手く行った)と尋ねられたので、私もまたそのフレーズを繰り返し、merci (ありがとう)と感謝する。だが、実を言うと、ホテルに帰って来るのは、そう簡単な事ではなく、紆余曲折があった。というのも、地下鉄に乗ったら、なんのことはないスムーズにパリ北駅に行って、ユーロスターの乗り場も確認できた。そして、今度はホテルのあるシャトレに戻るだけだと気楽に考えていたら、地下鉄の駅への行き方がわからない。なんの表示もなくて困った。それでどうしたかと言うと、駅構内で暇そうに談笑している3人組に助けを求めた。彼らはその制服から判断すると何かの作業員のようで、明かに仕事中なのにおしゃべりに熱中していた。私がお邪魔したところで何の問題もない。声をかけると、思った通り快く地下鉄のホームへの行き方を教えてくれた。

 そうやって無事ホテルがあるシャトレ駅に着いたものの、今度は出口が多すぎて、いったどこから出ていいのやら困惑した。数えてみると、14個もの出口があって、まるで日本の東京駅のようだ。もちろん、東京駅ならそれぞれ行き先の表示があって何の問題もないが、パリとなると通りの名前に不案内な私などはお手上げだ。だが、そこは本来の能天気な性格で、まあ適当に外に出れば何とかなると考えた。なのに、現実はそううまくは運ばなかった。地上に出てみると、まさにそこは未知の場所で、”私は今どこにいますか”状態だ。なんとか少しでも糸口を探そうとうろうろしてみるが、さっぱりわからない。遠くに目をやるとセーヌ河畔と思われる緑が見える様な気もするが、自信がないのでうかつには動けない。正真正銘の迷子になった。

 さて、こうなると、誰かに聞くしかない。こんな時は地元のお店の人に聞いた方がいいと経験上は分かっていた。ふと見ると、カフェのテラスで大勢の人がお茶を飲んだり、食事をしていた。それで、私はテラス席の一番端っこで、ひとりで何やら書き物をしている初老の男性に尋ねることにした。まずはボンジュールと挨拶した後、持っていた地図を差し出して、「私は今どこにいるのでしょうか」と聞いてみた。すると、男性は「あなたの泊まっているホテルはどこなの?」と単刀直入に聞くので、ホテルの予約確認書を取り出して、見せたのだが、困ったような顔をした。どうやら住所だけではわからないらしい。それで、Googleの航空写真を見せて、「ここです」とホテルの場所を指し示すと、「ああ、FRANPRIX(ホテルのすぐ隣にあるスーパーの名前)があるじゃないか!」と言ってくれた。

 それからはカフェの店員さんも巻き込んで、ホテルへの行き方を説明してくれた。何のことはない、そこはホテルから 300mも離れていない場所だったが、異邦人の私にはわからなかった。この時初めて、パリの地下鉄の出口を間違えたら、とんでもないことになることを学んだ。出口がいくつもあるだなんて経験は初めてで、パリの地下鉄は”怖い”と言うよりも初心者が乗りこなすには”手ごわい”と感じた。

 また、特筆すべきことは、パリの地下鉄でチケットを買うのがそう簡単ではないことだ。どういうことかと言うと、券売機があれば、お金があれば、クレジットカードがあれば、すべて上手く行くと言うわけでもないという意味である。なんとも旅行者にとっては不便きわまりないことなのだが、券売機では札が使えず、使えるのは1ユーロ、2ユーロ、5ユーロの硬貨のみなのだ。それなら、クレジットカードで買えばいいと考えるのが普通で、本当は現金を使いたいのだがという本音を脇に置いて、試してみた。

 すると、何たることか、「あなたのカードはシールドで保護されているので、使えません」とのとんでもない表示が出た。別のカードでも試してみるが、同様に却下された。これはいったいどうしたことかと頭を抱えるしかない。私の場合は今回、5年前のカルネの残りが4枚ほどあって、それを使えたので幸運だったが、それが無かったらどうなっていただろうか。

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