人生は旅

人生も旅もトラブルの連続、だからこそ‘’今‘’を大切にしたい

パリ滞在3日目に風邪を引く

あろうことか、鼻水が止まらない

 パリでの最高のロケーションのホテルに泊まって、夢心地の私は、早速オランジェリー美術館を目指した。この美術館はモネの大作「睡蓮」の4つのバージョンが鑑賞できる唯一の場所で、いつ行っても落ち着いた雰囲気が漂っている。誰もが静かに絵を見つめたまま、動かない。私に限っていえば、見ているだけで、幸せになれる稀有な絵画だと思う。できればいつまでも眺めていたいが、他の人もいるのでそうも行かないので、2階に上がって、ルノアールセザンヌゴッホマチスなどの誰もが知っている名画を見て回った。

 この美術館に行った人ならわかると思うが、ここはルーブルからけっこう歩かなければならない。それはルーブルに隣接している広大なチュイルリー公園の敷地を横切るのと同じだからだ。まだかなあ、と内心思いながら歩くと、ようやく公園の敷地が終わる頃に「オランジェリー」の文字の看板が見えてくると言うわけだ。今回は行く時間が遅かった、いやそれでも、10時を少し過ぎるくらいだったが、5年前と比べて人が多いのに仰天した。美術館の前には長蛇の列ができていた。あれ、こんな光景は見たことがないので、戸惑った。だいぶ待つことを覚悟したが、係員に尋ねると、ミュージアム・パスを持っていたため、あっけなく中に入れた。どうやら、あの長蛇の列はチケットを持っていない人たちの列だったようだ。列に長時間並ぶことを承知の上で、それでもチケットなしで来る人たちの心模様が理解できない。その後、行ったオルセー美術館でも同様で、ミュージアム・パスはさしずめ、時代劇の黄門様の印籠のようなものだ。日本にいる時は、あんなものは必要ないだの、昔に比べて一回しか使えないのはひどいだのと、散々文句を言っていたくせに、それでもとりあえずの形で買っておいたよかった。

 なぜ、最初にルーブル美術館に行かなかったかと言うと、それは予約が取れていなかったからだ。ホテルを移動する必要があった私は、翌日の9時半に予約を取っておいた。一番早い予約時間は9時だったが、もう満員だったので諦めた。私は何でも早めに目的の場所に着いておきたい性分で、その日も本当は9時半少し前に行けばいいものを8時半ごろに行ってしまった。普通なら1時間くらい待つことぐらい何の問題もなかった。だが、その日はあいにくの荒天で、冷たい雨が降っていて、おまけに風もあって肌寒かった。今となっては自慢にもならないが、私は海外旅行中に、体調を崩したことは一度もなかった。それなのに、ルーブルで予約の時間を待つ1時間の間にどうやら風邪を引いてしまったようなのだ。まずは鼻水が出始めて、鼻を何度かんでも、どうにもこうにも埒が明かない。鼻水が止まらなくて、鼻にティシュで栓でもしておいた方がいいくらいだった。

 それに、日本から持ってきたティシュペーパーが切れかかったので、あまり買いたくはないが、パリで買うはめになった。実を言うと、パリでティシュを買うのは20年ぶりぐらいだろうか、泊まったホテルが安ホテルだったので、その時は必需品として買う必要があった。だが、今回は鼻をかむと言う切羽詰まった目的があって、仕方なく馬鹿高いティシュを泣く泣く買った。本当のことを言うと、外国には日本の箱ティシュというのはなくて、紙ナプキンを小さく長方形に折ったタイプの物しかないが、”郷に入らば郷に従え”とばかりにそれを買って使うことにする。その値段を日本円で計算すると、買うのを躊躇してしまうので、あえて考えないことにする。要するに、日本の薬局で売っているポケットティシュが何個が入っているパックを500円程度で買うようなものだ。

 コロナが一段落した時期なので、もちろん解熱剤も持って行ったが、幸運なことに発熱はなく、鼻水だけで済んで、2週間後の帰国の時はすっかり良くなっていた。私は本当についている人だとつくづく思う。まあ、とは言っても、胃の不調は相変わらずだったが。

mikonacolon